この記事をまとめると ■クルマの基本特性を表す数字に、「全高・全幅比」というワードがある
■「ロード・ハギング・レシオ」の数値が低いと走行性能が高いクルマといわれている
■レーシングカーのみならず、ローダウンの効果は乗用車でも体感できることが多い
車高を下げるって意味あるの? 聞き慣れない言葉かもしれないが、クルマの基本特性を表す数字に、「全高・全幅比」がある。より正確にいえば、「全高(重心高)÷トレッド」で、「ロード・ハギング・レシオ(道をつかむ比率)」と呼んでいるメーカーもある。
この数字が小さければ小さいほど、車体の重心と左右の車輪を結んだ二等辺三角形の底辺が長いカタチになり、クルマの“座り”がどっしりと安定し、タイヤがしっかりと路面を捉え、ロールやピッチングが少なくなって走行性能が向上するというわけだ。
日産R35GT-Rの加速シーン 画像はこちら
レーシングカーが地を這うような低い車高になっているのはこのためで(空力的理由ももちろんある)、たとえばF1マシンの「全高・全幅比」は、0.485(メルセデスAMG F1 W15)。一般的な市販スポーツカーのマツダ・ロードスター(ND型)は0.712。軽ハイトワゴンのダイハツ・タントは1.190といったところ。
メルセデスAMG F1 W15 画像はこちら
ちなみに、NDロードスターに車高調サスを入れて、ノーマルより30mmローダウンしたとすると、「全高・全幅比」は0.695になる。
「この違い、体感できるのだろうか?」と思うかもしれないが、意外なことに、確実な違いを感じ取れることが多い。
サスペンションで車高を落とすと、サスストロークが減るぶん、必然的にスプリングのバネレートも高くなるので、車高の違いだけで比較するのは難しいが、ジムカーナなどでは左右の窓を全開にするだけでも重心が下がって、ロール量やピッチング量が変わるのがわかるぐらいなので、車体全体が30mmでも下がれば、余分な動きが減り、コーナリングの印象が変わってくるのだ。
ジムカーナを走るスバルBRZ 画像はこちら
だからこそ、レーシングカーの設計者は、サスペンションストロークなどそのほかの事情が許す限り、車高を低くしようと工夫するわけで、クルマの重心が低くなると、タイヤの接地性と、安定性が高まり走行性能が向上するのは間違いない。
ただ、「車高を下げること」とロールの中心、「ロールセンター」が下がることはイコールではないという問題もある。
車高調のイメージ 画像はこちら
ロールセンターはサスペンションアームの角度で変わり、車高を下げた結果、サスアームが上向きになると、重心とロールセンターの距離が離れてしまい、結果としてロール量が変わらない、あるいは増えてしまうということも……。
それを防ぐには、車高調サスでローダウンすると同時に、ロールセンターアジャスターといったパーツを組み合わせ、ジオメトリーをアジャストしてやるのが理想的。
ロールセンターアジャスターを装備した足まわり 画像はこちら
そのほか、ローダウン=バネレートのアップで乗り心地が固くなったり、最低地上高が減って段差を越えるときに注意が必要になったりといったデメリットもついてまわるので、走行性能と実用性、ルックスの3点で、一番折り合いがつくところを、ユーザーが個々に見つけていく必要があるだろう。