この記事をまとめると
■かつて新車ディーラーでは年度末などの増販期になると大幅値引きを行っていた
■バブル経済崩壊以降はディーラー利益が減って値引き額も減少、最近の物価高騰がさらにディーラー利益を圧迫
■現在は増販期とそれ以外でほとんど購入条件に差はないため、欲しいときに商談しても損することは少ない
かつては増販期に大幅値引きを行うのが定番だった
事業年度末や事業年度締めでの上半期末となる9月、そして暦年締めでの年末となる12月などは「増販期」とも呼ばれ、新車をより好条件で購入することができる時期とされている。過去には車両本体価格(メーカー希望小売価格)からの値引きが増販期にはとくに大きくなっていた。そのように値引き額が年間を通じて乱高下するため、「車両本体価格」ではなく「メーカー希望小売価格」という表現にいまはなっている(ここではわかりやすく車両本体価格という表現を使う)。
車両本体価格からの値引き原資は販売するディーラーの利益からとなるのが一般的。バブル経済のころは車両本体価格におけるディーラー利益も厚みがあり、そこから数十万円レベルの値引きを行っても、とにかく販売台数がハンパなく多かったので(ざっくり現状の倍程度の市場規模)、派手な値引きをして乱売しても、ディーラーでは十分な利益を確保できていたのである。
しかし、バブル経済の崩壊とともにディーラー利益は削られる一方となった。エアバッグやABSなど標準装着するデバイスが増えてくるなど、新車の製造コストが上がり、それなりに車両本体価格も上昇傾向となった。モデルチェンジのたびにコストアップ分などを車両本体価格に反映するのだが、それでも十分コストアップを吸収できるほどではないので、ディーラー利益分が削られることとなり、車両本体価格からの値引きも相対的には抑制されるようになってきた。
ただし、アルファードのようにそもそも車両本体価格の高い高級車は「高収益車種」とも呼ばれるモデルとなり、ディーラー利益もコンパクトカーなどに比べれば十分確保することができた。そして先代アルファードは、とにかく爆発的に売れた。ある暦年締め年間新車販売台数では10万台強を販売するなど、とにかく売れまくった。
再販価値も投資対象と見る人がでてくるほど高値安定していたので、残価設定ローンを利用して新車購入してもらえば、完済後や返済途中でディーラーが引き取っても自社で再販売したり、転売しても十分利益が取れたので、モデル後半には70万円引きなどという値引き額も飛び交っていたが、このようなケースはかなりレアなケースとなっている。
そしてさらに、昨今の物価高騰がディーラー利益をさらに圧迫した。輸入車はすぐに数十万円レベルの車両価格アップで対応したが、日本車は物価高騰分に対応できるような「値上げ」になかなか踏み込めないなか、仕方なくディーラー利益を削って対応した。