この記事をまとめると
■クルマの可動部分を覆うゴムパーツのことを指す「ブーツ」
■クルマの駆動力や操舵に重要なパーツに必要なグリスを封入するために用いられる
■もし破損するとクルマのコントロールが効かなくなるため車検時には必ず検査される
クルマの可動部分を覆うゴム製の蛇腹パーツ
車検や点検整備を経験したことがある人なら、その際に「ブーツが切れてますね、交換しないとなりません」なんて言われた覚えがあるでしょう。初めてその言葉を耳にした人は、「え? クルマってブーツを履いているの? ていうかどこに?」なんて思った人もいるのではないでしょうか。
クルマのブーツは、足に履くスネを覆う部分が長い靴のことではなく、可動部分を覆うゴムのパーツのことを指します。
ここでは、そのブーツとは何ものなのか、そしてどんな役割のものなのかを掘り下げていきたいと思います。
■ブーツとはなに? 足に履くものと何が違う?
「ブーツ=boots」という言葉を調べてみると、英語で長靴のように足首をすっぽり覆う同部分が長い靴のこと、という説明が大部分です。
語源は「boot」で、第一の意味は、単数形として(足に履く)ブーツの片方を表すようですが、足と下脚部を覆うもの、という意味もあり、それがクルマのブーツに転じたのではないかと思われます。
余談ですが、イギリスでは荷台や荷室という意味もあるようで、けっこうややこしいことになっています。ついでに付け加えると、PCなどを起動することも「boot」と言いますね。
さてクルマのブーツについてですが、主な箇所としてはジョイント部分のカバーとして装着されています。
例えば「ドライブシャフト・ブーツ」です。エンジンからの動力はミッションを伝ってプロペラシャフトでつながり、デファレンシャルギヤを介して、ドライブシャフトで車輪に伝えられます。
ドライブシャフトは動力を伝える役割とともに、サスペンションの上下動に追従するという役割があるので、グリグリと首を振る「ユニバーサル(等速)・ジョイント」という機構を備えています。
ドライブシャフトは、路面の細かい凸凹で揺すられる車輪の上下動に追従するにあたり、かなり激しく振られながら回転しているため、ジョイントにはスムースな作動のためにグリスを封入する必要があります。そのグリスの飛散を防止してなかに留めるのがブーツの役割というわけです。
ブーツの形状はジャバラ状の断面の円錐形状をしています。シャフトを覆うほうが細く、ジョイントのケースを覆うほうが太くなっているので、円錐の形状となっています。
材質はゴムで、ジャバラの形状と合わせて、ジョイントの曲げに対して柔軟に追従するようになっています。
もうひとつの主な使用箇所は、ステアリングラックの両端です。
現在主流の「ラック&ピニオン」方式のステアリングラックは、ギヤの差動でステアリングシャフトを左右にスライドさせる動きをします。そのシャフトをスムースに動かすために、シャフトのギヤ部分を覆うラックにはグリスが封入されています。
このグリスを漏らさないために、伸び縮みするブーツが装着されています。こちらの形状もジャバラになっていますが、ドライブシャフトのように曲げに対応するのではなく、伸び縮みに対応させるため、ジャバラの段数が多く、細長い形状になっています。
また、そのほかにもいろんな部分にゴムのブーツが装着されています。たとえばサスペンションのショックアブソーバー(ダンパー)のインナーロッドが出入りする部分を泥や砂から守るためにもブーツが装着されていますし、ブレーキのマスターシリンダーのシャフトの付け根や、クラッチロッドの貫通部分、あるいは電気配線をボディから取り出す部分などにも使われています。