この記事をまとめると
■自動車メーカーによる不正の発覚が後をたたない
■認証については関連機関の審査担当者がすべてに立ち会って行行われているわけではない
■認証制度のあり方について改めて議論することが必要な時期にさしかかっている
ダイハツの不正発覚はダイハツだけの問題ではない
ダイハツ工業(以下、ダイハツ)は2023年12月、一連の認証不正に関して第三者委員会の報告を発表した。それに伴い、国内ダイハツ製造拠点のすべてで新車の製造を停止した。これにより、販売店での販売にも大きな影響が及び、また今回の認証不正がクルマの安全に関る項目が多かったことでユーザーの間でも不安が広がっている。
直近では、国土交通省が2024年1月16日からダイハツに対して、認証不正のなかでもとくに悪質であると判断したトヨタ「タウンエース」など、商用車3車種に対して型式指定の取り消しを通知した。
型式指定とは、自動車メーカーが新車製造を行ううえでの最終的な許可であるため、同3車種の生産は当面の間、行うことができない。ダイハツは型式指定の再申請に向けた準備を進めることになる。型式指定の再申請が受理されるまでの期間は、先に燃費不正であった日野の場合、数カ月間から約1年に及んでおり、ダイハツについてもこうした日野の事案が再申請受理に向けた目処になるのではないだろうか。
自動車メーカーによる不正といえば、2010年代半ばに発覚したドイツフォルクスワーゲンによる排ガス等の規制に関する不正がある。当時、フォルクスワーゲングループはブランドイメージを失墜し、経営状態に大きな影響を及ぼした。
このような自動車メーカーによるさまざまな不正はなぜ起こるのだろうか?
端的に言えば、認証などの仕組みに不正を可能とする「穴」が多いということだ。日本の場合、認証については国土交通省の関連機関が対応するのだが、認証に関する試験は多岐に渡り、すべての試験に同機関の審査担当者が立ち会ってはいない。自動車メーカーが認証に関る規定に準拠した試験を行い、その結果を国に報告するという形が多い。いわゆる性善説に基づく仕組みだ。
以前、三菱自動車工業(三菱)による軽自動車の燃費不正が発覚した際、国土交通省の関連機関の審査担当者が立ち会う形で行われた「確認試験」を取材した。
その際、こうした性善説に基づく仕組みに対して改善が必要だという話になっていたのだが、それ以降も認証に関する抜本的な制度改革が行われておらず、今回明らかになったダイハツによる各種の認証不正が野放しになってしまったともいえる。
ダイハツによる認証不正は、さまざまな認証に対して、多くの車種で長期間に渡り行われてきたという極めて悪質なもの。ダイハツが今後、組織を変革することは当然のことだが、それとは別に国が認証制度のあり方について改めて議論することは必須だ。