この記事をまとめると
■日産の「901運動」によって生み出されたモデルのひとつにプリメーラがある
■プリメーラは名機SRエンジンと引き締められた足まわりで走りのよさをウリにしていた
■プリメーラのエクステリアは地味だが流行に左右されないバランスのよさがあった
足まわりの完成度が欧州車を超えたと大絶賛
みなさんは「プリメーラ」という日産の車種を知っていますか? おそらくいま30代以下の人は馴染みのない車種だと思います。実際には1990年から2005年までの16年間、初代から3代目までの3モデルが発売されただけの、他のロングセラーの車種からしたら短い期間しか販売されなかった車種なので、当時を生きたベテランの人のなかにもあまりよく知らないという人がいるかも知れません。
しかし、実際に乗っていた人や、その素性をよく知る人は、それなりの敬意を持って懐かしく思う人が少なくない車種なのです。ここでは、その「プリメーラ」のキャラクターを印象づけた初代の「P10型」について話していこうと思います。
初代プリメーラは欧州市場をメインターゲットに据えた硬派な車種
バブルの真っ最中に企画が始まり、1990年に登場した初代の「プリメーラ」は、その当時の日産が掲げていた社内スローガンの「901運動」のなかで生み出された車種のひとつです。
「901運動」というのは、1990年までに技術の世界一を目指すというものです。印象的なCMが話題になった1988年のシルビア(S13)やセフィーロ(A31)などもその勢いのなかで生まれた車種と言われていますが、中心となっていたのは、スカイライン(R32)、フェアレディZ(Z32)、インフィニティQ45(G50)、そしてプリメーラ(P10)の4車種です。
そのなかで最後発となったプリメーラは、欧州の市場に放つ鋭い矢としての役割を負わされた車種として開発されました。
日本市場では前出のシルビアやセフィーロなどが華々しくデビューして話題に乗り、ひとつのムーブメントを起こしていましたが、その頃のヨーロッパの動向は、好景気で陽気な日本とはまったく違う雰囲気でした。しかも、元から2000ccクラスでよく走るエンジンや、頑強なボディ、しっかりした足まわりなど、日本に比べると硬派なクルマづくりが受け入れられる土壌でした。
そんな市場を攻略するための車種として、ヨーロッパの流儀に則ったうえで、世界一と誇れる技術を盛り込んでつくられたのがこのP10型プリメーラというわけなのです。
名機SR18/SR20と新開発のシャシー&サスペンションで走りをアピール
プリメーラに搭載されていたエンジンは、自然吸気のDOHC4気筒タイプのみです。排気量が1831cc/110馬力の「SR18Di」と、同じ1831cc/125馬力の「SR18DE」、そして1998cc/150馬力の「SR20DE」の3機種というラインアップです。
駆動方式は基本がFFですが、最後期に4輪駆動が加わり、降雪地域やスノーレジャー向けの需要にもしっかりフィットしました。
そのFFベースの利点を最大限に活かしたパッケージングも高評価のポイントでした。フロントウインドウの位置を前進させ、キャビン高も高めに設定することで、同クラスでは最大の室内広さを実現しています。大柄の大人が4人乗ってもゆったりくつろげる空間がありました。
また、トランクの容量もかなり大きく、内容量を圧迫する開閉アームを廃してヒンジ式(ダンパー付き)にするなどの工夫が盛り込まれていました。