この記事をまとめると
■1990年代初頭に軽自動車スポーツが流行した
■マツダAZ-1/ホンダ・ビート/スズキ・カプチーノの3台はABCトリオと呼ばれた
■なかでも異彩を放ったホンダ・ビートの贅沢すぎる中身を紹介する
走りの雰囲気を楽しむクルマかと思いきやさにあらず!
まだバブル経済の余韻が残る平成初期の1991〜92年に誕生して一世を風靡した、「ABCトリオ」こと3車種の軽スポーツカー、オートザム(マツダ)AZ-1、ホンダ・ビート、スズキ・カプチーノ。このなかでもっとも早い1991年5月に誕生し、唯一ターボエンジンを搭載しない、ミッドシップ軽オープンカーのビートはどんなクルマだったのか、筆者の体験も交えながら、改めて振り返りたい。
軽自動車といえば、1998年の規格改正以前であってもエンジン排気量の規制値は厳しく、NA(自然吸気)エンジンでは余裕のある動力性能を得にくいのが実情だろう。スポーツカーとなれば軽自動車とはいえ相応の動力性能が求められるので、NAエンジンを選択したビートは、決して速さを楽しむ類のスポーツカーではないと想像できる。
しかも、ホンダが公式に掲げた商品コンセプトは「ミッドシップ・アミューズメント」。初代NSXに続いてMR(ミッドシップエンジン・リヤドライブ)の駆動方式を採用しつつ、ソフトトップの2シーターフルオープンボディ、可愛らしい内外装デザインと組み合わせ、軽四輪車初の運転席SRSエアバッグを設定するなど、「従来のクルマのどのジャンルにもあてはまらない新鮮で個性的な魅力を持つ“見て、乗って、走って”楽しい新しいコンセプトのクルマ」(発売当時のプレスリリースより)であることが強調されていた。
しかしながら、そのパッケージングやメカニズムをつぶさに見ていくと、ビートが決して雰囲気重視のふんわりしたクルマではなく、むしろ徹底的に理詰めで作られた本格的なスポーツカーであることが理解できる。