この記事をまとめると
■イマドキの新車セールススタッフは「売り子」になったといわれる
■現在の新車セールススタッフは購入希望客が来るのを待って売ることがメインになっている
■かつてのようにお客をその気にさせる営業は時代的に厳しい面もある
昔はディーラーに来た日の夜にお客の家に訪問するのが当たり前
新車販売の世界に詳しい人からよく聞くのは、「いまどきのセールススタッフは売り子になってしまった」というもの。“売り子”というのは、例えばデパートなどの店頭でお客がくるのを待っていて、“欲しい”と思っているお客がやってきたら希望商品を販売する人といったようなイメージをしてもらいたい。
“売り子”といえども、“欲しい人にただ商品を売る”という流れに終わらず、商品情報を提供しながら、その場で購入してもらうように話しかけることになるのだが、基本的には欲しくて店頭まで足を運んできた人が相手となることには変わりはない。
令和のいまでは、店頭にきたお客に“アンケート”として住所や氏名、連絡先などを記入してもらえても、これをベースにDM(ダイレクトメール)などを送ることはできるが、直接自宅を訪れ販売促進活動を行うことは、個人情報保護法に触れたるとしてNGとされている(店頭イベントなどの案内以外には使わないとの注意書きが記されている)。“お客さまアンケート”への記載要請は、それこそ30年ほど前のバブル景気のころでも存在していた。ただし、そのときは昼間に店にきてアンケートに記入してもらえたら、その日の夜になると記載された住所へ出かけ、「その後いかがですか?」と販売促進するのが当たり前であった。
「昼間に相手をした感触で、“新車を買いそうだ”という可能性でランク付けして訪問先を絞り込むこともあったそうです。当時は“アンケートに記載すれば夜にはセールススタッフがやってくる”というのは、客側もある程度覚悟して記入していたとも聞いています」とは事情通。
令和のいまでは、“働き方改革”もあり、18時ぐらいにディーラーは閉店となり、残業は厳しく禁じられているので、当然、夜間にお客の家を訪問して歩くことなどはできなくなっているので、やりたくてもできないのである。
いまどきの“売り子”といわれるセールススタッフと過去のセールススタッフの大きな違いは、昭和や平成初期では“買う気のなかったお客をその気にさせて買ってもらう”というのがおもな仕事であったのである。自分が過去に新車を売ったお客のなかから、「この人はそろそろ買い換えそうだな」とか、「この人に売り込んでみよう」と“アタリ”をつけて売り込みに行っていたのだ。
昭和のころのように、お客の家での商談が当たり前だったころは、「お茶菓子が出てきたら半人前」、「晩御飯をごちそうになったら一人前」とよくいわれていた。それだけお客との距離を縮めることができると、前述したように“そろそろ”と、そのようなお客の家に新車を売りに行くと、スンナリ入れ替えてくれたりしたのである。単にお茶菓子やご飯をごちそうになるだけではなく、そこまでの仲になれば自ずとその家の家族構成を把握したり、なんとなく財務状況などもわかってしまうのである。そこで「息子さん、大学生ですよね、運転免許取ったならどうですか?」と増車を勧めることも可能だったのである。