この記事をまとめると
■ハイブリッド車の駆動用バッテリーはEVの駆動用バッテリーと性質が異なる
■EV用バッテリーの再利用は多いがハイブリッド車の駆動用バッテリーは再利用が難しい
■ハイブリッド用のバッテリーは今後どのように再利用できるか未知数な面も多い
同じバッテリーでもHEV用とEV用では特性が異なる
ハイブリッド車(以下:HEV)のバッテリーが劣化すると、モーター駆動による補助が減るため燃費が悪化する。したがって、HEV用のバッテリーは、劣化が起きにくいように、全容量の2~8割の間で利用するように制御され、放電しきってしまったり、満充電にしたりしないようになっている
電気自動車(EV)用のバッテリーも、劣化を抑える点では同様の考えが前提ではあるが、それでも、HEVのようにエンジンも併用して移動するわけではないので、放電しきってしまうこともあれば、満充電から出発したいときもあるなど、HEVほど充電管理を常に一定で行うのは難しい。
そのうえで、貴重なバッテリー資源であるから、クルマでの利用のあと再利用するなど、原料に戻すリサイクルの前に活用の道を拓くことは重要だ。
ところでHEV用とEV用では、同じ駆動用バッテリーといっても特性が異なる。HEV用は少ない電力量での充放電を頻繁に素早く行うことが求められ、EV用は走行中に回生を活かした充放電も行うが、長時間にわたって十分に電気を貯めておける特性が求められる。そこから、EV用のバッテリーは、定置型としての二次利用にも適しているのである。
一方、HEV用バッテリーは、頻繁な充放電向きなので、たとえば再生可能エネルギーの電力を貯めておくとか、災害用として支援するバックアップにするとか、そういった使い方には必ずしも適していない。このため、再利用するという視点が必ずしも広がっていなかった。
いずれにしても、バッテリーは、1セルごとに使用後の品質が異なるので、車載のバッテリーパックのままでは適切な電力需要を賄えない懸念が残り、セルごとの品質の点検が、再利用では不可欠だ。
それを行うには、バッテリーパックを車体から降ろしやすいこと、また、バッテリーパックをセルごとに分解しやすいことが求められる。HEVは、そうしたクルマで使用した後の視点での設計が必ずしも行われておらず、古いHEVほどバッテリーパックの分解は難しいのではないか。
以上のような使い方や特性の違いによって、HEV用バッテリーが劣化した際には、バッテリーパックごと交換するほうが納得のいく性能を取り戻せるだろう。セルやモジュールでの部分交換は、いずれにしても、もっとも性能の低いセルのバッテリー性能に引きずられるので、費用が安くあがるとしても、期待した性能に戻らない可能性が考えられる。
将来的に、セルごとに分解し品質を確認したうえで中古バッテリーとしてHEVへ積み替えることもできるかもしれないが、充放電性能を優先する特性のHEV用バッテリーの中古が、どれほどの性能を約束できるかは未知数だ。