この記事をまとめると
■新車ディーラーの現場では中古車販売がメインになるかもという話を聞く
■物価の上昇によって新車販売だけでは稼ぎが少ないという現場の声が少なからずある
■メーカー系中古車への注目が集まっているのでディーラー側も本腰を入れようとしている
物価高騰分を吸収せざるを得ない新車ディーラー
新車ディーラーでありながら、中古車販売が今後メインになっていくかも? 最近販売現場へ行くとこのような話をよく聞く。
2022年あたりをピークに世界的半導体不足などにより新車の生産遅延が深刻となり、それに伴い「注文を入れても数年待ち」といった長期的な納期遅延が広く発生し深刻な状況となった。その時、それなら中古車へと一部の新車購入希望客が流れた。しかし、そもそも新車の納車が進まないのだから下取り入庫も激減した。中古車需要が高まる中、供給量が減ったので中古車市場も深刻なタマ不足となり混乱したのだが、その時は、より新車に近い高年式車ほど深刻なタマ不足になりながら注目を集めていた。
そもそもそれ以前から、新車ディーラーでは中古車販売を積極化していたのだが、その時は「元試乗車」の中古車を販売していた。禁煙はもちろん、走行距離など厳しく管理して半年ほど使った試乗車を中古車として販売していたのである。「同型新車の商談をしていて、予算などがどうしても合わないようなお客様に、『中古車ならありますけど』と勧めて販売しておりました」とは現場のセールスマン。
ただ最近話を聞いていると、わかりやすくいえば「新古車」と表現できるような、あくまでディーラーで管理していた新車に近い中古車ではなく、一般ユーザーが使っていた一般的に流通しているような中古車を中古車専業店のように販売していくことになりそうだというのである。生産状況も回復しつつあり、納期遅延も以前よりかなり改善傾向にあるので、納車まで待てないから中古車を買うという購買行動もなくなってきたといっていいのだが、それではなぜ新車ディーラーで、しかも新車販売のセールスマンまでもが中古車を積極的に販売するようになりそうだというのだろうか。
そのひとつの理由は、本当に新車販売だけでは食べていけなくなってきている事情があるようだ。食料品や日用品の値上げが続き家計を直撃しているなか、新車価格の値上げは当初目立って行われなかった。
ただそれは消費者への小売販売価格の話で、ディーラーへの卸売り価格は上昇を続けていったとはよく聞く話。つまり、それ以前でもディーラー利益というものはカスカスだったのだが、いよいよ「赤字にならないぐらい」というギリギリのレベルになってきているというのである。モデルチェンジを行っても目立って価格アップしていないと消費者としては嬉しいのだが、じつは諸物価高騰分をディーラー利益削減で吸収しているともいえるのである。
そのためモデルチェンジすると、車両本体価格からの値引きはかなり引き締まるか、ゼロになるケースが目立っている。一部改良などで十万円単位の値上げをしたとしても、果たしてコスト上昇分を吸収しているかと言われれば十分ではないだろう。過去には新車販売利益不足分を物販やメンテナンスで補うという流れもあったが、いずれもコスト上昇を吸収できるほどの価格や工賃設定ができないのは新車販売と同様である。