この記事をまとめると
■トヨタはbZ4XとプリウスPHEVにオプションで「ソーラーパネル」を設定している
■将来的にソーラーパネルでEVを走らせられるほど電気への変換効率が高まればソーラールーフの有効性が上がる
■現状は建物に設置したソーラーパネルによる電力でEVに充電するのが現実的だ
効果はあるが値段を考えると実用的装備とは言えない
トヨタ初の電気自動車(EV)であるbZ4Xは、メーカーオプションでZグレードにソーラールーフの装備が可能になる。これを活用すれば、年間で1800km走行分の電力を得られるという。年間1万km走るクルマの使い方であれば、18%の走行を太陽光による電気で走れることになる。排出ガスゼロのEVとして、脱二酸化炭素への貢献をさらに前進させる機能になる。
新型プリウスのPHEVも、1日の充電により最大で6.1kmのモーター走行に寄与できるという。いずれも、オプション価格は約28万円だ。
一方、太陽光発電は、家庭用や大規模太陽光発電の設置を含め、日照の条件が可否の決め手になる。駆動用バッテリーへの充電は、トヨタの場合で駐車中となるので、まわりに高層住宅やマンションなどの建物が少ない、広々とした地域の駐車場でないと想定される効果は得にくくなるだろう。戸建ての住宅地でも、日中ずっと太陽光のあたる車庫というのはまれな例であるはずだ。なおかつ、車庫に屋根を備える場合は、十分な充電性能は得られないだろう。
現状、走行中は12ボルトの補器バッテリーへの充電となるので、日向を走行し続けても、走行用のバッテリーには充電されない。
将来的に、クルマの屋根に設置したソーラーパネルでEVを走らせられるほど電気への変換効率が高まれば、ソーラールーフの有効性が上がる期待はある。ただし、その場合、車載バッテリー容量をどれくらいに見込むか、考えどころとなるだろう。なぜなら、太陽光の発電だけで走れるなら、車載バッテリーは容量を減らしたほうが軽くなり、電力消費の効率が高まる。しかし、曇天や雨天ではソーラーパネルの発電量が減るので、車載バッテリーの電力に依存することになる。
結論として、クルマの屋根に設置するソーラールーフの効用は、期待はあるものの、安定的に活用するのは難しく、それであるなら、家庭や建物にソーラーパネルを設置し、その電力でEVに充電するのがより実用的ではないか。
系統電力の発電もそうだが、エネルギーミックスといわれる多様な発電が電力の安定供給につながり、それは、EVへの電力供給も同様だろう。好天のなかドライブできるときに太陽光からの電力で足を伸ばせたら……、そんな幸運に巡り合える装備として、ソーラールーフを考えるといいのではないか。