ロイヤルサルーンやアスリートでも耐久性抜群でパーツ交換も容易
法人タクシー車両はクラウン・コンフォート、クラウン・セダン、NV200バネットあたりが定番で、ほかにプリウスやプリウスαが目立つぐらいだが、個人タクシーとなるとその車種はじつに多彩となっている。
タクシー車両については過去には、後部ドアの開口面積やシートサイズ、フロントシートのスライド量など細かい「きまりごと」が、道路運送車両保安基準の規制として規定されていたが、平成27年6月12日にこの規制が廃止され、いまではどんなクルマでもタクシー車両として使うことが可能となった。
廃止となって2年ほど経過しているが、まだまだ個人タクシーでもクラウンが圧倒的に目立つ。ただそのなかで、アルファードやヴェルファイア、エスクァイアなどのミニバンのタクシーが目立ってきているが、これは車両規制が廃止になった影響と考えていいだろう。
どんな車種でもタクシー車両として使うことができるようになったからだけでなく、ミニバンはいまや電動スライドドアが最低でも助手席側リアサイドスライドドアには標準装備されるので、従来のセダンタイプのときのような、自動ドアの架装がいらなくなったこともミニバンタクシーが増えてきている理由となっているとのことだ。
ただ法律上は何でもタクシー車両として使えるようになったが、今後もクラウンが多く使われていく可能性は十分高い。その理由は耐久性能の高さや、割安な交換部品など維持管理コストが安いことがあげられる。
法人タクシーとは異なり、個人タクシーでクラウンというのは、ロイヤルサルーンやアスリートのことを指す。
法人タクシーで使われるクラウン・コンフォートや、その派生のクラウン・セダンは営業車ニーズを強く意識しているので、走行距離50万㎞ぐらいまではエンジン換装やトランスミッション交換などの「大手術」もなく使い続けることができるとされている。
一方「民生版」ともいえるロイヤルサルーンやアスリートも、個人タクシーだけでなく、ハイヤーや法人の役員車両などのニーズも多いので、コンフォート系ほどではないが、走行距離30万kmぐらいまでは安心して乗り続けることができるように開発されていると聞く。
また他車に比べると、バンパーやヘッドライトユニットなども、交換の際には作業手順が簡単であったり、部品単価が割安になる構造にもなっているようで、タクシー車両として使いやすい条件を備えているのがドライバーの間では人気となっているようだ。
自動ドアの架装もクラウンのように架装台数が多ければ、架装工賃も初めてタクシー車両に使われるようなワンオフに近い車両よりは割安になると聞いたことがある。ちなみに自動ドアについては、法人タクシーでは、運転席から助手席側後部ドアまでをステーでつなぎ、運転手が操作する構造が主流となっているが、個人タクシーではエンジンの負圧を使うバキューム式が主流となっている。
個人タクシーは当然ながら、それぞれが独立した個人事業主となっている。珍しい車両でインパクトを強めたいところだが、導入コストや維持管理コストを考えると、目だちたいというだけでは、珍しいクルマをセレクトすることもなかなか勇気がいるようだ。
輸入車については、一部タクシー会社がメルセデスベンツ車(Sクラスなど)を積極導入し、都心から成田空港までの利用などで人気があるようだ。
しかし業界関係者に聞いてみると、「ベンツは確かにステイタスも高いし、耐久性能なども申し分ないですし、長距離を走るには申し分ありません。しかし所詮は欧州車なので、日本の道路状況にベストマッチした走行性能ともいえないのです。そのため都内などで営業していると『乗り心地が固い』などとお客さんに言われることもあるようですし、乗り心地の固さを指摘するドライバーも目立つようです」とのこと。
足まわりなどに関しても、長い間個人タクシーニーズとしても高かったクラウン系は、市街地でのタクシー使用も考慮した味付けとなっているのである。すでにクラウンを使っている個人タクシー事業者は多いので、代替え母体だけを考えても、当分はクラウンの天下が続きそうである。