この記事をまとめると
■「働き方改革関連法」の物流・運送業界への本格適用が2024年4月に迫っている
■現状、労働時間の決まりをクリアしている物流・運送会社は7割にも満たない
■2024年問題の解決策として国土交通省が推奨しているのが「中継輸送」
「中継輸送」でドライバーの日帰り勤務を実現
トラック業界においていよいよ迫ってきた課題である「2024年問題」。これは、2019年に施行された「働き方改革関連法」の物流・運送業界への本格適用が2024年4月に迫っていることにある。この法律では時間外労働が一般的な業種で原則月45時間、年間350時間と規定されている。しかし、物流・運送業界ではその事業や業務の特性上、扱いが別となり、年間960時間の上限制限となっている。その規定が2024年の4月から適用されるというわけだ。
ちなみにこの時間外労働の上限が一般的な業種と異なる業界は、物流・運送業界だけでなく、建設業界や医師などもそれに該当するという。
現状、この年間960時間の上限設定をクリアしている企業は、全運送業界の7割にも満たない。3割以上の企業が上限をオーバーしているといわれている。つまり、このまま2024年の4月を迎えると、その3割の物流・運送会社が法律違反となってしまうのだ。
この問題をクリアする方法のひとつとして国土交通省が推奨しているのが「中継輸送」。これは、ひとりのドライバーが集荷・積み込み地点から納品・配達先への運行をすべて担うのではなく、集荷エリアと配達エリアの間に中継地点を設定し、その積み荷をリレーのバトンのように中継地点から先のドライバーにバトンタッチすることで、ドライバーの日帰り勤務を可能にし、労務負担や時間外労働を軽減させるというシステムだ。
この「中継輸送」には以下がある。
1. トレーラー・トラクタ方式:積荷ごとトレーラーを中継地点から先のトラクタに引き継ぐ方式。
2. 荷物積み替え方式:中継地点で荷物を積み替える方式。
3. ドライバー交代方式:トラックを乗り換えてドライバーが交代する方式。
2の荷物積み替え方式は中継地点での積み替え作業に人手と時間を要し、3のドライバー方式も、運転席の環境が変わるため、ドライバーの精神的負荷がかかってしまう。とくにドライバーにとって愛機のキャビンは仕事の空間であると同時に生活空間でもあり、自身で快適な内装にするためにカスタマイズを施している人も多い。その現状を考慮すると、中継輸送を行うのなら、やはり1のトレーラー・トラクタ方式が現実的だ。
また、この中継輸送は、集荷・地点から中継地点を経由して納品・配達地点へ向かうだけの片道ルートではなく、中継地点に双方向から積み荷を積んだトレーラーが落ち合い、そのトレーラーを交換することによりそれぞれの帰り荷も確保。無駄のないトラックの運用が可能になるわけだ。
この中継輸送のシステムが進むことにより、トレーラー(トラクタ)が活躍するステージが増えることは確実だ。
北海道ではすでに多くのトレーラーが物流の現場で活躍している。これは、彼の地に海底トンネルや大規模橋梁といった道路インフラが存在せず、本州へ渡るにはフェリーを使用する必要があるから。そのフェリーを使用する輸送手段として、トレーラーのみをフェリーに積み込み、下船先でまた別のトラクタが引き継ぐという「ドレージ」というシステムが盛んに使われているから。
このフェリーを使用するという手段も、働き方改革法本格施行後のドライバーの負担軽減策として注目されている。このドレージについては、また稿を改めてリポートしよう。