この記事をまとめると
■路線バスの廃線や減便がここ数年で増えてきている
■世界的に見てもバスの運賃が日本は安いので、採算が取れなくなっている
■区間制運賃の導入などの料金体制の見直しを本格的に進める必要性がある
路線バスの廃線や減便が相次ぐ背景とは
2023事業年度締めでの下半期が始まる10月1日より、各地の路線バスで減便や路線廃止が相次いでいる。すでに多くで報道されているように、そもそも十分ではなかったのだが、ここへきて運転士の不足状況がさらに悪化したことが大きな原因となっている。ほかにも乗降客数が極端に少なく採算が合わずに減便や路線廃止が行われることもある。
深刻な運転士不足の背景はいくつかあるが、大きなものでは給料の安さがあるのは間違いない。そして採算の合わない路線が続出してしまうのは、一部で運賃が安めともいえる水準で設定されていることもあるのではないかと考えている。
筆者は路線バスを使った旅行番組を好んで見ているが、地方路線は中扉(あるいは後ろ扉乗車)から乗車時に、交通系ICカードをタッチするか整理券を引き抜き、降車時に乗車した区間ごとに設定した運賃を支払う方式がほとんどなっている(区間制)。
地域によってもちろん運賃設定が異なるのだが、ふと運賃表を見ると、40分ほど乗車して700円近い運賃を支払っていた。一方で、東京都交通局のバス(都バス)など、都市部を走るバスの多くは、前扉から乗車時に200円前後の運賃を支払うと、その路線区間はいわば乗り放題となる(均一料金制)。
筆者の経験では、都市部のバスで起点から終点停留所まで40分以上かかるような路線もあるが、それでも運賃が200円前後で済むのである。もちろん、地方部と都市部では交通環境が異なるので、同じ40分でも移動距離に差があるため、同じ40分の移動で運賃に大差が出るのはやむを得ないことなのかもしれないが、その開きがあまりに大きいのも間違いない。
そのようなことを考えていると、最近の減便や路線廃止のニュースとともに、運賃値上げのニュースも相次いでいる。事情通は「乗車時に支払う均一料金というものは改める必要があるのではないか」との話も出ているとしている。前扉乗車で均一運賃の路線を中扉乗車で区間制に切り替える動きがなかったわけではないが、都市部でも区間制の積極導入を進める時期にきているようだと筆者は考える。
ドイツの都市部では地下鉄や路面電車、路線バスではゾーン制運賃が導入されているようだが、多くの国の大都市では均一運賃が主流となっている。しかし、ロンドンでは約320円、ニューヨーク市やロサンゼルス市では約435円となっており、日本より運賃設定は高い。今年9月にラスベガスを訪れた際、ダウンタウンとストリップ地区を結ぶバスに乗った際には運賃として4ドル(約600円)を支払った。