充電時間やリスクを考え充電器側が満充電にしない制御にしている
少しずつ少しずつ増えているEV用の急速充電設備。当初は高圧電源を必要とする大容量なものがメインストリームでしたが、現在はやや低い電圧で充電する中間的な充電設備がコスト面の優位性もあって、増えているようです。
プリウスPHEVも、初代は普通充電のみに対応していましたが、2代目になって急速充電に対応するようになりました。充電時間は待ち時間になることがほとんどですから、やはり短いに越したことはないですよね。日本は他の先進国に較べて通常の電源の電圧が低いので、これからも急速充電の要求が高まっていくことは間違いありません。
さて急速充電については、こんな文言がついて回ります。「80%充電まで約30分」といったような表示です。普通充電なら「満充電(100%)まで6時間」という表示なわけですから、20%を残した意地悪な表現に見えなくもありません。
じつはこれ、充電制御によって80%や90%で充電を終了する急速充電器がほとんどだからです。つまり急速充電では、満充電にならないのではなく、制御で満充電になる前に止めているのです。それには充電に伴ういろいろなリスクがあるからです。
電気自動車が走り始めた2000年あたりの初期のころ、満充電まで充電する急速充電器も存在していました。当時は「一度90%で停止しますが、満充電にしたい場合は再度充電ボタンを押してください」と書かれていたような記憶があります。しかしそれは90%まで30分で充電し、満充電にするまでにさらに30分かかる、というような説明書きがありました。
じつは急速充電では80%や90%といったところまでは、残量に大きく影響されることなく、同じくらいの時間で充電できます。たとえばリーフには30kWhと24kWhのモデルがありますが、どちらも警告灯が点灯してから急速充電すると80%まで、ほぼ同じ時間で充電できます。大きな容量のバッテリーや、残量が少なくなったバッテリーは充電しやすく、短時間に大量の電力が入っていきます。徐々に充電が進むと、電力は入っていかなくなるのです。
バッテリーのもつリスクは、劣化と火災です。スマートフォンを充電中に、異常発熱して発火する場合があるのは、ニュースで聞いたことがありますね。そのため異常発熱しないようにバッテリーの状態をモニタリングしながら、慎重に充電する必要があります。過充電は最悪で、発熱はするし、激しく劣化する可能性もあります。
だからある程度の充電が済めば、ゆっくりと充電しながらバッテリーの状態をしっかりチェックする必要があるわけです。
ただし、ゆっくり充電するとなると、急速充電の意味が判らなくなりますね。残り10%を急速充電でも、普通充電でもそんなに変わらない、というのであれば何だか妙な感じです。そういう意味もあって、80%や90%といった充電量で終了させる形で運用しているのでしょう。その電気自動車が残りの10%充電する時間で、他の警告灯が点灯した電気自動車を充電することができるわけですから。
とはいえバッテリーはまだまだ進化する余地が残っています。いずれ100%までスッと急速充電できるバッテリーが登場することでしょう。