この記事をまとめると
■輸入車は「ファーストエディション」という導入を記念した限定車を設定することが多い
■話題性の確保やオプション満載の限定車を用意して納期を安定させる狙いがある
■あまりお買い得感のない割高なモデルも¥あるので、価格差に注意したい
輸入車はなぜ導入記念に限定車をラインアップするのか
2023年10月11日にアバルト500eが発売された。フィアット500をベースにした電気自動車、500eのアバルト仕様だ。エアロパーツを装着して、フロントモーターの最高出力は、500eの118馬力から155馬力へ向上している。電気自動車ながら走行性能を高めたことが特徴だ。
このアバルト500eの発売に際して、特別仕様車のアバルト500eスコーピオニッシマが200台限定で発売された。ボディの側面にはスコーピオニッシマ専用のデカールが装着され、デジタルサーティフィケーション、ウェアラブルキーも標準装着される。
デジタルサーティフィケーションとは、自分がユーザーであることを証明する血統書のようなもので本国から送られる。ウェアラブルキーとは、ドアロックのみが可能なリモコンキーだ。エンジンの始動は行えないから、たとえば子どもに車内の荷物を取ってきてもらうときなどに安心して使える。スコーピオニッシマでは、専用ボディカラーも選べて、価格はハッチバックが630万円だ。レギュラーグレードの615万円に比べて15万円の上乗せになる。
このほか、フォルクスワーゲンなども含めて、輸入車の発売に際しては、ファーストエディションとかローンチ(発売)エディションなどの名称で特別仕様車を設定することが多い。
その理由を海外メーカーの日本法人に尋ねると以下のように返答された。
「輸入車を発売したときには話題性が欲しい。そこで目立つボディカラーや装備を採用した特別仕様車を台数限定で設定して注目を集める。また、発売直後は注文が多く入るため、細かなメーカーオプションなどには対応しにくい。そこでオプションの選択肢がない、すべてを標準装着した最上級の特別仕様車を用意して、迅速に納車することもある」。
同じような売り方は国産車にも見られ、現行フェアレディZは、2022年1月に特別仕様車のプロトスペックを投入した。この後、同年4月に一般グレードの価格も明らかにして受注を開始した。
ただし、プロトスペックの価格は696万6300円と高く、その装備内容は、3カ月後に発表された一般グレードのバージョンSTとほぼ同じだった。価格はプロトスペックがバージョンSTよりも約50万円高く(バージョンSTが値上げされた現在の価格差は約30万円)、異なるのは色彩程度だから、結果的に先行発売されたプロトスペックは割高になっていた。
発売時点で設定する特別仕様車の価格には良心的な配慮が求められる。一般グレードの価格も公表して、ユーザーが特別仕様車と一般グレードを比較して選べるようにして欲しい。