この記事をまとめると
■乗用車にルームミラーがなくても保安基準をクリアできるかを解説
■サイドミラーで自車の左右の外側線上後方50mまでの交通状況を確認できればルームミラーはなくても合法
■設置する場合にはルールがあり、脱落構造であることと定められている
ルームミラーのないクルマが新車として販売されている
先般、日本に上陸してきたアルピーヌA110の究極のライトウェイトバージョン、A110R(A110Rの「R」は「レーシング」ではなく「ラディカル=過激な、極端な」という意味)には、リヤウインドウに代わりカーボン製のリヤパネルを採用し、あわせてルームミラーも廃してしまったが、トラックならともかく、乗用車(スポーツカー)でルームミラーを設置しなくても、保安基準はクリアできるのだろうか?
ご心配なく。じつは保安基準上、ルームミラーのある・なしは問われていない。
道路運送車両法の保安基準・第44条には、「自動車は後写鏡を備えなければならない」と記されているが、この「後写鏡」とは、ドアミラーやフェンダーミラーのことを指す。
より細かく説明すると、この後写鏡は「運転席から、自動車の左右の外側線上後方50mまでの間にある車の交通状況を確認できること」が条件になっているので、左右のサイドミラーでこれをクリアしていれば、ルームミラーがなくても合法になる。
実際、バンボディのトラックやコンテナ車、キャンピングカーやパネルバンのトラック、荷物満載のワゴン車、ワンボックス、バンなどは、真後ろの視界は塞がれているわけで、ルームミラーがあってもほとんど役割を果たしていない。それでも車検に通るのだから、ルームミラーは法規上設置義務がなくても問題ないという状況なのがわかるはず。
ただし、設置する場合はルールがあって、「事故などで衝撃を受けた時、乗員のケガを防ぐために脱落する構造(可変式もしくは脱着式)であること」と定められている。
また、大き過ぎたりして、前方の視認性を妨げるもの、妨げる恐れのあるものは、保安基準違反になるので注意が必要だ。
一方で、2016年6月からバックモニターが解禁となり、2021年6月からは、新型車に対し「後退時車両直後確認装置」の設置の義務化(継続生産車は2024年5月から)が始まっているので、これからはデジタル化されたミラーを併用し、より死角の少ない、後方視界の広いクルマが標準化されていくはず。
その分、呼称や接触不良、レンズの汚れなど新たな問題も生じてくる可能性もあるので、定期的なメンテナンスが欠かせなくなってくるだろうが、リヤまわりのデザインなどの自由度は増してくるので、そうした面はポジティブだ。