この記事をまとめると
■メルセデス・ベンツが2009年に発表したコンセプトカー「F-CELL Roadster」
■手がけたのは同社の若手社員や職業訓練生ら150人がデザインを作成
■世界初の自動車をモチーフにモダンな仕上がりを目指した
世界初の自動車をモダンにリメイクした衝撃コンセプトカー!
アイディアというのは必ずしも知見や経験から生まれるものではないこと、このメルセデス・ベンツのコンセプトカー「F-CELL Roadster」を見るとそんな風に感じます。パッと見たところ、細くて巨大なリムと複座オープンというスタイルから、馬ナシ馬車を想起されるのではないかと。じつはこれ、100年以上前にメルセデス・ベンツの創設者のひとり、カール・ベンツが作った世界初の自動車をモチーフとしたもの。そんな骨董品のどこをどう見たら、こんなレトロフューチャーなアイディアが生まれるのでしょうか。
F-CELL Roadsterはその名のとおり、メルセデス・ベンツが開発した燃料電池を動力源としたもの。複座のシートの後ろに搭載され、1.2kWの出力で航続距離はなんと350km! ですが、最高速はこの細いリム&タイヤでお察しのとおり25km/hと悠長な感じ。そのわりにF1かのようなフロントノーズや、乗員保護に効き目のありそうなバー形状のドアフレームなど、普通のクルマを作ろうと思ったらなかなか浮かびそうにないアイディア。
それもそのはずで、F-CELL Roadsterをコンセプトから実車の製作までを担ったのは、ジンデルフィンゲン工場の若手社員や職業訓練生ら150人のスタッフだから。本社の設計開発チームはF-CELLユニットや設備を提供しただけで、あとはフリーハンドでお任せだったとのこと。
で、若手がモチーフというかアイディアの基礎としたのが、世界初の実用自動車といわれるベンツ・パテント・モーターヴァーゲン。メルセデス・ベンツの創業者のひとり、カール・ベンツが1886年という大昔に作った単気筒ガソリンエンジンを搭載したクルマです。博物館に飾られている骨董品をよく見ると、先のF-CELL Roadsterがオマージュしていること一目瞭然です。