この記事をまとめると
■トヨタの北米法人はトラックに燃料電池を搭載する計画を発表
■2010年末ごろから世界中で水素ステーションなどの水素関係の研究開発が加速した
■トヨタは日本でも燃料電池トラックの普及に向けた協力体制を敷いている
トヨタの次の戦略はトラックへの燃料電池の搭載
これで一気に、燃料電池トラックが普及するのかもしれない。
このニュースを聞いて、そんなふうに思ったアメリカ人が多かったに違いない。
トヨタの北米法人は2023年5月2日、「パッカーとトヨタが燃料電池トラックを含む商用車事業での連携強化」というプレスリリースを出したからだ。それによると、パッカーグループ傘下のトラックメーカーであるケンワースのモデル名T680と、ピータービルトのモデル579に、トヨタの次世代燃料電池を搭載することを明らかにした。
トヨタとパッカーはこれまで数年間、2社で燃料電池トラックの研究開発を進めていた。そのうえで、これからは公道での本格的な普及のために、いわゆるリアルワールドでの検証を進めるというのだ。
トヨタは2023年からアメリカ国内で販売向けの燃料電池製造を開始する。
燃料電池車といえば、2000年代から欧米日韓で研究開発が活発し、アメリカではカリフォルニア州がフューエル・セル・パートナーシップという州政府プロジェクトを開始。ここではメーカーの枠組みを越えてリアルワールドでの実証実験が行われていた。
そうした現場をこれまで数多く取材してきたが、2010年代前半から中盤になるとカリフォルニア州や欧州で燃料電池車の量産に向けた開発が足踏みするようになった。
課題となったのは、水素を供給するステーションや、水素製造に関するコストがなかなか下がっていなかったこと、燃料電池車の需要の目途が立たなかったことなどが挙げられる。
日本ではトヨタが「MIRAI」の発売を機に、国は「水素普及に向けた元年」と称してエネファームのさらなる普及も含めて、水素の需要拡大を狙った。
しかし、そうした思惑とは裏腹に燃料電池車の需要は、「MIRAI」が第二世代に進化してからも一気に増える傾向は見られなかった。
それが、2010年末頃から、グローバルで燃料電池車や水素に関する事業への投資の拡大が目立つようになる。ESG投資と呼ばれる、従来の財務情報だけではなく、環境、社会性、ガバナンスを企業への投資に対する指標とする考え方が広まったからだ。
さらに、ロシアのウクライナ侵攻により、エネルギー安全保障の観点から天然ガスや原油に変わるエネルギー源として水素への注目が集まるようになった。
こうして時代の流れを受けて、トヨタは燃料電池の商用利用に積極的に動き出したといえる。
パッカーグループとの連携に加えて、ドイツのダイムラー・トラックとも、日野と三菱ふそうを対等な立場で経営統合することを発表している。ダイムラー・トラックとの間でも、燃料電池トラックの普及に向けた協力体制をトヨタは強化していく。
なかなか普及が進まなかった燃料電池車だが、当面は大型トラック向けとしてグローバルで新しい事業展開が活発化しそうだ。