クルマが「ボッコボコに凹んで」修理費100万円オーバーもザラ! 他人事じゃない「雹害」の実態と対策と修理方法を調べてみた (1/2ページ)

この記事をまとめると

■夏は積乱雲が発生しやすく、雹が降ることも多い

■大きさによってはクルマに当たると凹みが発生する場合がある

■板金に出すとデントリペアによってパネルを切断することなく修理することも可能だ

雹害恐るべし!!

 クルマのボディが凹むほどの雹が降ることなんて一生のうちに、あるかないか、なのかもしれない。とはいえ、実際に雹害に遭っているクルマはあって、悲惨な姿に言葉を失う。異常気象の続く昨今、その危険度は急速に増している。時代は変わった。もはや、「まさか!?」は通用しない。

氷塊の急降下爆撃 カミナリ雲がヤバい!

 異常気象のせいなのだろう。ここ数年、初夏から秋にかけて連日のようにニュースを騒がせているゲリラ豪雨。冠水による水没などクルマへの影響も小さくない。とりわけ、豪雨に伴う雹(ひょう)は深刻で、屋外にクルマがある以上、被害と無縁ではない。

 なにせ、ピンポン玉、もっと大きいものになるとソフトボール大の氷の塊が大量に空から猛スピードで降ってくるのだ。直撃を喰らえばひとたまりもない。ボディは広範囲にわたって点々と大きく凹み、最悪、ウインドウが砕け散ることもある。

 雹が降る仕組みを簡単に説明すると、カミナリ雲とも呼ばれる積乱雲のなかは、地面から空に向かって強い風が吹いている。この風で上昇した空気が急激に冷やされると氷の粒になって、雲のなかで徐々に成長。それが、溶けないまま地表に降ってくるのが雹。つまり、日差しの強い季節は、上昇気流が強まり、雹が降りやすくサイズも大きくなる傾向だ。

 降雹は、気温の高い地域に限った話ではなく、全国規模で発生。九州・四国に上陸した台風の影響で、静岡県や、遠く離れた北日本の大気が非常に不安定になるなどの事例もあった。青森県や宮城県にも豪雨や落雷とともに雹が降ったのは記憶に新しい。

 雹による被害は人や家屋、農作物などにも及ぶ。降雹時は強風を伴うことがほとんどで、時に竜巻によってクルマがひっくり返ることも。状況によっては車外への避難も必要だ。

 雹は氷の塊。硬いうえ、それなりに重い。直径約5センチの雹の落下速度はおよそ100km/hと言われており、クルマのボディ(鉄板)などたやすく凹ませてしまう。

 雹は積乱雲(入道雲)のなかで生まれ、成長する。ほとんどの場合、地表に落下してくる途中で溶けて大粒の雨になるが、大きく成長した雹は溶けきらず地面に降ってくる。

車両保険の加入は必須修理するなら即断即決

 実際に雹害に遭ったクルマを見たことはあるだろうか?

 ボンネット、ルーフ、トランク(リヤハッチ)といったボディ上部はもちろん、両サイドまで、直径数センチ・深さ数ミリ程度の無数の凹みに覆われているサマは「無残」としか言いようがない。

 もちろん、そんな状態で乗り続けるわけにもいかないので、大半の人は修理を考える。が、仮に、ほぼボディ全体にわたって凹んでいる場合の修理費用はそれ相応。今回取材した、関東で雹害を受けたというスバルBRZは、ボディ全周にわたって約300個の凹みがあり、全修理費用の見積もりは、およそ120万円だという(ボンネットパネルは新品に交換)。

 このBRZの場合、幸い雹害もカバーする車両保険に入っていたからよかったが、そうでなければ全額自腹だ。

 もっとも、ここ最近のコロナ禍による部品供給遅延の影響は、こうした修理にも及んでいて、パネルやモールなどの交換部品が届くまで数カ月を要することも。当然、部品が届くまで、部分的に未修理のまま乗らなくてはならない。

 雹害に遭ったからといって、すぐに修理してもらえるとは限らないのもツラい。局地的な降雹だとしても、同じように被害に遭ったクルマは数百、数千台にのぼる。ということは、ディーラーや板金塗装業者には修理依頼が殺到。現場はパンク状態で、見積もりすらしてもらえないケースも珍しくないのだという。

 修理するなら即断即決。初動が肝心だ。依頼が遅れるほど着工は後回し。修理現場の規模にもよるが、「受注から作業に取りかかるまで1年以上かかることもある」という。

実際に雹害にあった悲惨なBRZ

 今回、取材で訪れたデントリペア専門店に入庫されていたBRZの雹害は(ボンネットを除いて)約150箇所。修理期間は、1日中かかりっきりで1週間を要するという。

 クルマが受ける雹害は、ウインドウも同様。被害箇所が多く、ダメージが大きい場合は新品交換になるが、状態に応じて部分的に補修も可能。放置しておくとダメージは広がるいっぽうだ。

過去にはカボチャ大の巨大雹も……

 雹は強い上昇気流を持つ積乱雲内で発生するため、豪雨や雷を伴って降ってくる。

 積乱雲の上空の低温部で冷やされ、形成された小さな氷の粒は、落下途中で融解するが、上昇気流に乗って再び雲の上部に吹き上げられて再び表面が凍結。それを何度か繰り返すうち、氷の表面に、ほかの氷の結晶が付着するなどしてどんどん成長。つまり大きく重くなる。やがて重力が勝り、上昇気流がその重さを支えきれなくなったり、逆に強い下降気流が発生すると「雹」として地上に落下する。雹の発生は積乱雲が多く発生する夏季に多いが、地表付近の気温が高すぎると、完全に溶けて大粒の雨になることがあり、降雹は8月前後の盛夏より、初夏や初秋のほうが多いとも言われている。

 どちらも成因は同じだが、積乱雲から落下する直径5㎜未満の氷の粒は霰(アラレ)と呼ばれ、雹は直径5㎜以上のものをいう。ほとんどの場合、直径1㎝以下だが、大正時代、日本一暑い町としても知られる埼玉県熊谷市で降った最大級の雹として、直径約30㎝、重さ3.4㎏というカボチャ大の雹が記録されている。


新着情報