この記事をまとめると
■日産は「R32 GT-R EVコンバージョンコンセプトモデル」の製作を開始すると発表
■プロジェクトの進捗状況は日産の公式Twitterで随時発信されていく
■新車で購入したR32GT-Rに乗り続けている筆者が思うこととは?
イマイチ共感できないが期待を裏切って欲しい!
日産自動車は3月28日、R32型「スカイラインGT-R」をベースに、日産の最新電動化技術を織り込んだ、「R32 GT-R EVコンバージョンコンセプトモデル」の製作を開始すると発表した。
このプロジェクトの進捗状況は、日産の公式Twitterでも随時発信されていくことになっていて、その【R32EV】vol.1には、「この取り組みは、GT-Rに憧れて入社した技術者が「最高に好きなクルマに、今自分が関わる最新の電動化技術を載せて、もっとワクワクするクルマを造りたい」という思いから始まりました」と書かれている。
しかし、1992年に新車でR32GT-Rを購入し、以来31年間24万kmをR32と過ごしてきた筆者からすると、「R32EV」というのは正直イマイチ共感できない。
最新の技術に旧車の外観というと、筆者は銀河鉄道999を思い出す。銀河鉄道最速の特急列車、銀河鉄道999の外観は、いにしえの蒸気機関車C62を模したもので、中身は異星人の遺跡や科学資料に基づき設計された人工知能や超次元機関ボイラーなど最新のテクノロジーが組み込まれている。
そのことを「二度と帰らないお客のため、見かけが心休まる大昔の蒸気機関車にしてある」とメーテルが説明していた記憶があるが、日産車で同じコンセプトを狙うのなら、ハコスカあるいはS30Zに最新EVメカの組み合わせのほうが良かったのではないだろうか?
個人的に言わせてもらうと、R32GT-Rの功績は、国産スポーツカーのパフォーマンスを一気に10年分進化させたところにあると思う。
そのR32GT-Rの車体を使ってEV化したとしても、自動車テクノロジーを10年分進歩させたことにはならないと思うのだがどうだろう。
前後2つのモーター、あるいは四輪独立の4つのモーターを使って、それを細かく電子制御し、大パワー4WDでなおかつ、コーナリング性能も優れたマシンは作れるかもしれないが、速いクルマは作れても、ワクワクするクルマになるかどうかはかなり疑問。
そういっては何だが、毒のないGT-Rは、GT-Rではないはず。モノでも薬でも、人の身心に変化や刺激を与えるモノには、ある種の毒が必ずある。
R32GT-Rがデビューしたときも、加速感やコーナリングといった走りのパフォーマンスにも圧倒されたが、直6のRB26DETTが吹き上がっていくときの音や、バックミラーに迫って来るときの顔つきの悪さにも惹かれたものだ。さらにいえば、燃費の悪さに対する罪悪感すらある種の魅力だったし、排ガスの匂いや、フェードしかけたときのブレーキの匂いなども、全部毒で魅力的だった。
その点、EVでシュルシュルシュル~と無音に近い状態でフル加速しても、あの毒々しさは味わえない。
そういう意味で、今もし最新のテクノロジーで、R32GT-Rをリメイクするなら、EVではなく、バイオ燃料やカーボンニュートラルフューエル(CNF e-fuel)仕様の直6ツインターボのハイパフォーマンスエンジンを開発して欲しかったというのが偽らざる気持ちだ。
内燃機関で環境問題をクリアして、毒々しさを隠すことなくワクワクさせる。技術の日産ならできるはず。そうした取り組みをはじめてくれれば、「やっちゃえNISSAN」と素直にエールを送れるのだが……。
とはいいつつ、日産公式Twitterの「#R32EV」は、これからもチェックし続けるので、このプロジェクトはこのプロジェクトで、いい意味で筆者の思いを裏切って欲しいと願っている。