この記事をまとめると
■「フィット・フォー・55」実現のために世界中の自動車メーカーが電動化に向けた動きを見せている
■ドイツ政府がEUに対して「フィット・フォー・55」の一部修正を要請した
■カーボンニュートラルに向けたさまざまな方法を欧州でも取り入れることになるかもしれない
欧州がEVシフトを推し進めている理由
「どうして最近、欧州メーカーは急激にEVシフトを進めているのか?」そんな疑問を持っている日本のユーザーは少なくないのではないだろうか。
スウェーデンのボルボや英国のジャガーは完全なEVメーカーへの転換を宣言。また、ドイツ勢ではメルセデス・ベンツが2020年代末に、「市場の環境が整っていれば……」という条件付きだが、2030年代には新型車をすべてEVにする見込みだ。
日本メーカーでも、ホンダは2040年までにグローバルで販売する新車100%をEVまたは燃料電池車にすると宣言している。そのほかの日本メーカーは、自社が得意とする電動化技術や次世代ディーゼルエンジン技術などを駆使した多様な方法でカーボンニュートラルに向けた戦略を進めているところだ。
また、日本の自動車メーカーと二輪車メーカーでつくる業界団体、日本自動車工業会では「カーボンニュートラル実現のためには、さまざまな方法がある」と主張し、欧州で進む急激なEVシフトを警戒してきた。
では、なぜ欧州がEVシフトへと大きく舵を切っているのか? 背景にあるのが、欧州連合(EU)が2010年代末に制定した、欧州グリーンディール政策だ。その中に、「フィット・フォー・55」という政策パッケージがある。
なにが「55」かというと、2030年に1990年比で、CO2排出量の55%減を達成目標に掲げているのだ。さらに、2035年には、同100%としており、これにより2035年に欧州域内で発売する乗用車と小型商用車(バン)の新車100%が事実上、EVまたは燃料電池車になるという解釈だ。
「フィット・フォー・55」については、EU参加各国や自動車業界などがこれまで、さまざまな協議を行ってきたが、2023年2月14日に欧州議会が可決した。その13日後に、ドイツ政府がEUに対して、「フィット・フォー・55」の一部修正を要請したのだ。
具体的には、2035年以降も欧州域内で、e-フューエルの使用を認めるべきだという主張である。
e-フューエルとは、総称としてカーボンニュートラル燃料と呼ばれる製造時にCO2排出量を軽減している燃料こと。再生可能エネルギーに由来することを意味する「e」が付く。
やはり、欧州の国や地域では、電動化に対する社会状況に大きな差があり、欧州域内で販売量が多いドイツメーカーにとっては、現実的な解決策が必要だったということだろう。
結果的に、日本が主張しているような「カーボンニュートラルに向けたさまざまな方法」を欧州でも取り入れることになるのだろうか? ドイツの要請を受けてのEUの今後の動きは、日本での輸入車市場にも大きな影響を与えることになりそうだ。