この記事をまとめると
■2023年1月より車検証の電子化が開始
■紙面への記載内容はクルマそのものの情報に絞られている
■その他の情報はスマートフォンのアプリケーションで確認することが可能
クルマを売買する際には面倒だという声も
今年の1月から、車検証の電子化がはじまった。
運転免許証もICチップを組み込むことで、カード本体への文字による記載内容を簡素化している。車検証も、同じように紙面から得られる情報を簡素化し、たとえば車検の期限や、所有者、使用者などの名称と住所などは、カードリーダーか、スマートフォンのアプリケーションで確認することになる。
紙面への記載内容は、ナンバー、車体番号、基本的にクルマの寸法や重量など、クルマそのものの情報に絞られている。
車検証の電子化は、整備事業者などが自らの事業所などで有効期間の更新をできるようにし、運輸支局(陸運事務所)などへ出向かなくてもよいよう作業を簡素化するのが理由だという。
また、電子化に合わせて、紙面の記載情報が少なくなることもあり、車検証の寸法が従来のA4からA6へ縮小される。そして、厚紙にICタグが貼り付けてある。
車検証の電子化は、陸運事務所や整備業者の手間を省く効果はありそうだ。
一方、クルマの利用者や所有者が、車検の有効期限を確認しようとしても、ICタグの情報から読み込まなければならなくなる。読み込むためのアプリケーションは、スマートフォンなどにインストールする。
スマートフォンでさまざまなことができるようになった今日、車検証の有効期限などの確認は、アプリケーションをインストールしていれば容易にできるだろう。だが、じつは、そう頻繁に知る必要があるわけでもなく、いざ車検が近づいたときにすぐ確認したいと思っても、もしまだインストールをしていなければ、その手間からはじまることになる。
また、クルマを売買する際に、所有者や、車検の有効期限をすぐ確認できないため、面倒だとの声もすでにあがっているようだ。その昔、私は中古車販売に関わったことがある。売買のやり取りのなかで、譲渡のための書類に何が必要か、車検の有効期限の残りはどれくらいあるかなどの情報によって、必要書類(個人名か法人名か)や、適正な譲渡価格の交渉などが進んでいく。車検証の紙面にそれらが記載されていれば、その場で相手と話が進むが、スマートフォンで情報が手に入るといっても、アプリケーションを入手できるのは、電子車検証の所有者か、提示を受けられる者に限られると条件設定されているので、誰もが簡単に確認できるわけではなさそうだ。
電子化に対しては、時代の要請であると思う。しかし、これまでの商慣習を変更したり、利用者や所有者が不便に思ったりしない仕組みである必要があるのではないか。いまのままでは、運輸支局と整備事業者の手間が省けるという以外に、クルマの商取引全般に目の行き届いた変更ではなさそうにみえる。