この記事をまとめると
■日産GT-Rの2024年モデルが発表された
■欧州向けモデルは生産を終了
■欧州の人がGT-Rに思うことを考察する
欧州でもっともGT-Rの人気が高いのは英国!
2022年3月、欧州向けの日産「GT-R」の生産は終わってしまった。最大の理由は、音量規制である。
欧州では、クルマの性能について欧州のみならず、グローバルで標準化や基準化という発想がある。そうした議論は、国際連合(国連)の欧州経済委員会のWP29と呼ばれる会議体で協議される。WP29は、自動車基準調和世界フォーラムと略される。
WP29といえば、近年では自動運転や先進運転支援システム(ADAS)の分野で日本が会議の議長を務めるなど、日本の存在感が増しているところだ。
そんなWP29のなかで、グローバルで高まる地球環境への対応から、排出ガスのみならず、音が及ぼす社会への影響を加味したクルマのあり方に注目が集まるようになってきた。
その上で、マフラーからの音量規制の厳格化が段階的に進んでいるのだが、その基準にGT-Rが適合しないため、日産は欧州でのGT-R販売を中止せざるを得なくなったのだ。
では、欧州でのGT-R人気や需要はどうなのか?
日本のユーザーにとっては、欧州でのGT-Rといえば、ドイツのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(北フルコース)で果敢にタイムアタックする歴代GT-Rの姿を思い浮かべるかもしれない。
だが、実際に欧州でもっともGT-Rの人気が高いのは、世界の自動車産業界を長年に渡り牽引してきたドイツではなく、バックヤードビルダーの歴史が刻まれている英国だ。英国内には、GT-Rに精通した日産ディーラーが複数存在する。
そうした英国の日産ディーラーや英国のGT-Rオーナーにとって、いかなる理由でも欧州でGT-R新車販売の道が途絶えることを、とても悲しく思っている。
確かに、近い将来、GT-Rはこのままの姿では継続できないことを、英国を含めて欧州の人たちは認識してきた。
なぜならば、欧州では、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が、自動車を含む環境政策である「欧州グリーンディール」を推し進めていて、「2035年までに、EU域内では乗用車および小型商用車は(事実上)EVまたはFCV(電気自動車)」という方針を示しているからだ。
また、EUから抜けた英国でも、独自にガソリン車に対する規制強化の動きが強まっている。だが、EVシフトよりもかなり先のタイミングで、音量規制によってGT-R欧州仕様は姿を消してしまったのだ。そうしたなか、英国のGT-Rオーナーにとって「GT-Rはコレクタブル(骨董品)」という意識が以前にも増して高まってる。
そもそも、「フェアレディZ」と同様に、「GT-R」の欧州ユーザーはけっして多くない。「フェアレディZ」の場合、初代S30からアメリカでの販売台数が多く、最新モデルでも「グローバルでの需要のほとんどがアメリカ」(日産商品開発関係者)という。一方で、「GT-R」は北米仕様がR35からと、欧州に比べて導入時期が遅い。
そのため、欧州とアメリカそれぞれでの「GT-R」オーナー数の差は、「フェアレディZ」ほどは大きくないと言えるだろう。
いずれにしても、「GT-R」を愛する欧州の人々にとって、2024年モデルに対する憧れはとても強いと言えるだろう。