スーパーカーは「履くタイヤ」もスーパー! 銘柄は市販品と同じでも「BG」「F」などの刻印は「別モノ」の証だった

この記事をまとめると

■最高速度300km/hを超える高性能モデルはタイヤメーカーと共同開発した専用タイヤを履くことが多い

■高性能モデルにとっては構造やトレッドパターンなども含めてどれだけ耐久性のある専用タイヤを開発できるかが重要だ

■専用タイヤはブガッティなら「BG」、フェラーリなら「F」の刻印がサイドウォールに刻まれる

持てるパフォーマンスの発揮のためには高性能なタイヤは不可欠

 今回は、スーパーカー&ハイパーカーの走りを文字どおり足もとで支えるタイヤの話をしようと思う。すでにスーパーカーの世界では、その最高速は300km/hの壁を越え、さらにハイパーカーと呼ばれるより高性能なモデルでは400km/hオーバー、そして500km/hさえ超える最高速を誇るモデルが誕生するのも時間の問題。

 たとえばこの500km/hの壁にもっとも近い位置にいるとされるブガッティは、シロンをベースとした最高速テスト用のスペシャルモデルで、すでに490.5km/hという数字を記録しているし(ただしフォルクスワーゲンのエーラ・レッシェンで行われたこのテストでは、風向きの影響を考慮するために両方向を走行しなければならないという最高速記録のレギュレーションを満たさなかったため、正式な世界記録としてそれは認められることはなかった)、ノーマルのシロンでさえ、最高速はリミッター制御で420km/hに抑えられるという驚異的な性能を備えることは周知のとおりである。

 そして400km/h、あるいは300km/hという速度域で、もっとも重要な役割を果たすのがタイヤだ。参考までにシロンに純正装着されるタイヤは、ミシュラン製パイロット・スポーツ・カップ2。ブガッティはその推奨交換距離を4000kmとしているが、前作のヴェイロンでは同時にホイールの交換もブガッティの本社において必要としたが、シロンではタイヤのみの交換がどこでも可能なシステムになったものの、ホイールは2回のタイヤ交換につき、やはり交換が推奨されている。

 ブガッティがなぜここまでタイヤの交換スケジュールに拘るのか。それは装着されるミシュラン製タイヤのサイドウォールにスタンプされる「BG」のマークが物語るように、それは開発時からブガッティとミシュランの共同開発による専用タイヤであるという事情が大きい。シロン・ベースの試作車が記録した490.5km/hの最高速時に、タイヤが1秒間に68回転することはタイヤサイズがわかれば誰でも計算できるが、ブガッティのエンジニアがコメントしたところによれば、そのときにタイヤが負担しなければならないGは、じつに5300Gにも達するという。

 最高速が420km/hのスタンダードなシロンでもこのあたりの事情は変わらないから、タイヤの構造はもちろんのこと、トレッドパターンなど、耐久性にどれだけ依存した専用タイヤを開発できるかは、両社にとって大きなテーマだったのだ。ちなみに最高速テスト前に行われたX線検査においても、そのために開発されたタイヤには一切の異常は発見されなかったという。

 それぞれのモデルが持つパフォーマンスを、どれだけ最大限に発揮させることができるのか。それはタイヤの性能にその多くがかかっている。フェラーリならば「F」や「G」、ランボルギーニでは「L」、マクラーレンには「MC」といったように、自動車メーカーとタイヤメーカーの共同開発による専用タイヤは、それぞれのモデルが持つ潜在能力をフルに引き出してくれる最高のアイテムだ。それは乗り心地や静粛性にも大きく貢献する。タイヤの交換時にはぜひその存在を意識していただきたい。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

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