大賞受賞者はペター駆るインプレッサWRCに憧れてカーデザイナーの道へ
自動車に関する研究者・技術者・学生など約500社5万人を会員にもつ業界団体、自動車技術会は昨年11月より、中学生・高校生を対象にした「カーデザインコンテスト」を開催。3月27日にアルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)で表彰式を行いました。
自動車技術会によればこのコンテストは、「中高生の時期にカーデザインを通じたものづくりの魅力に触れることで、自動車産業の発展に寄与する人材を育成する」……つまり、未来の自動車業界をリードするカーデザイナーを育てることを目的に、毎年開催されているものです。
第5回となる今回は、「10年後の暮らしを楽しくするクルマのデザイン」をテーマとして作品を募集し、高校生257件、中学生11件、計268件の応募がありました。そのなかで、トータルでもっとも優れた作品に送られる最優秀賞「カーデザイン大賞」に選ばれたのは……北海道苫小牧市青翔中学校3年の青木智志さんが制作した「bonds」でした!
「日本刀の造形と水素自動車の融合」をコンセプトに、日本刀の鋭さやしなやかさを表現したというbondsは、古き良き2シーターFRスポーツカーを想起させるロングノーズ・ショートデッキのプロポーションを備えながら、長大なホイールベースを与えることで、2人の乗員がシートをフラットにし足を伸ばして寝られるだけの居住空間を確保。
さらに、水素自動車ならではの特性を活かし、走行中に排出した水を浄化し飲み水として利用することで、災害時などに長期間車中泊をした際にエコノミークラス症候群になるのを防ぐという使い方が提案されていました。
もしこのクルマが市販化されたら、普段は過疎地にも安心して足を伸ばせる、ロングツーリングにもうってつけなグランツーリスモとなるのは間違いありません。免許取りたての頃にはユーノス・ロードスター、今はホンダS2000に乗り、両方で車中泊を経験してエコノミークラス症候群になりかけたことのある筆者としては、このbondsは喉から手が出るほど欲しい1台です!
さて、そんなbondsをデザインした青木さん、じつは今回が4回目の挑戦。第1回のときはまだ小学5年生で審査対象外だったものの、審査員は描き方のアドバイスになるようなスケッチを送り、「中学生になったらまた応募して欲しい」と伝えていたそうです。
その2年後、中学1年生となった第3回の際に改めて応募し、イメージや機能がもっとも優れて絵に表現されている作品に送られる「カーデザイン賞」を受賞。翌年の第4回も応募して再度「カーデザイン賞」を受賞し、回を経るごとに腕を上げ、そして今回ついに「カーデザイン大賞」を受賞したのです。しかも、これまで応募した作品はすべてスポーツカー!
「これは相当なクルマ好きに違いない!」と思い話を聞くと、「幼い頃に父からWRCのビデオを見せられていて、その頃活躍していたペタ-・ソルベルグ選手が操るスバル・インプレッサWRCが好きになったのがきっかけで、最初はラリードライバー、後にカーデザイナーを目指すようになりました。クルマの絵を描くのは4歳の時から趣味にしています」というではありませんか!
やっぱりクルマ好き、そして自動車業界を担う人材を育てるには、小さい頃から英才教育を施すのが一番ということでしょう。
「将来はやはりカーデザイナーになって、この会場にいるプロのカーデザイナーも驚くようなクルマを作りたいですね」という青木さん。第1回の「カーデザイン大賞」受賞者はすでに就職し、プロのカーデザイナーになっているということですから、将来が本当に楽しみです!