現在はスカイラインのみ! かつて勢いのあった日産のセダンモデルを振り返る (1/2ページ)
この記事をまとめると
■日産のセダンモデルについて解説
■現在はスカイラインのみ
■過去のモデルや海外のモデルも紹介
一車種だけが受け皿になっている日産のセダンモデル
セダン離れが進む国内市場。日産もその流れには抗えず、セダンのラインアップがごくわずかとなりました。
現在、唯一ラインアップしているスカイラインの詳細と中古で購入可能な日産のセダンを紹介していきます。
日産の現行のセダンはスカイラインのみ!
現行スカイラインとは?
1957年に初代がデビューした後、フルモデルチェンジを繰り返し13代目となる現行モデルが登場したのが2013年。ハイブリッドユニットを搭載し、量産車初となるバイワイヤ式ステアリングなど最新技術を数多く搭載したことで話題を集めました。
しかし、国内仕様にも海外モデルと同じインフィニティのエンブレムを装着したことやリヤテールランプが丸形ではないことなど、熱狂的なスカイラインファンにはそっぽを向かれてしまいます……。
ただしモーターのリニアな加速力を始めとする動力性能の高さや、ハンドリングの良さは健在。スカイライン“らしい”走りを備えたスポーツセダンであることは間違いありませんでした。
クルマのできが良いわりに評価が上がらなかった現行モデルにはさまざまな改良が施されていきます。
デビュー後、ハイブリッド仕様に加えメルセデス・ベンツ製2リッターターボエンジン搭載車を追加。
2019年に行われたマイナーチェンジでは、国産車初となる高速道路ハンズオフ走行を可能とした先進支援運転機能「プロパイロット2.0」を装備。最高出力405馬力を発揮するVQ30DDTT型3リッターV6を搭載したハイパフォーマンスモデル「400R」を新たに設定するなど、より“らしさ”を打ち出す改良が施されました。
またこのマイナーチェンジで2リッター直4ターボエンジンが廃止となり、パワーユニットはVQ30DDTT型3リッターV6とハイブリッド仕様になっています。
しかし国内での販売は伸びず、2022年8月にハイブリッド仕様を廃止し、ガソリン車のみの販売となりました。同時期にシーマとフーガの生産が終了となったため、スカイラインに搭載されていた「1モーター2クラッチ式」ハイブリッドを搭載するモデルが消滅し、日産のハイブリッドユニットは「e-POWER」のみとなっています。
スカイラインはこんなクルマ
パワーユニット
現行モデルのデビュー時はハイブリッド仕様のみがラインアップされていました。
このハイブリッドユニットは3.5リッターV6エンジンとモーターを組み合わせ、2つのクラッチで制御。システム最高出力は364馬力を誇りました。
日産が「1モーター2クラッチ式」と称したこのシステムは、エンジンとモーターをクラッチにより、自在に接続と切り離しを実現。エンジンのみの動力で走行することはもちろん、モーターでのアシスト、またエンジンと駆動系をクラッチで切り離すこともできるため、EV走行も可能でした。
デビュー翌年に追加されたメルセデス・ベンツ製2リッター直4エンジンは最高出力211馬力を発揮し、同じくメルセデス・ベンツから供給される7速ATと組み合わされています。
また2019年のマイナーチェンジでメルセデス・ベンツ製2リッター直4に代わり搭載されたVQ30DDTT型3リッターV6エンジンはツインターボを搭載し、標準仕様が304馬力、ハイパフォーマンス仕様の400Rが405馬力を発揮。現在はこのエンジン搭載車のみが販売されています。
デザイン&シャシー
13代目となる現行モデルのデザインテーマは「ディグニファイド・ダイナミクス」。品があり凛としながらも躍動感があるデザイン─日本語にするとこのような意味合いになりますが、先代、先々代と比べてワイド&ローなプロポーションを強調しつつ、引き締まったボディを備えたことが特徴です。
デビュー時はフロントグリルにインフィニティのバッジが装着されていましたが、2019年のマイナーチェンジでフロントマスクを日産のデザインランゲージである「Vモーショングリル」を採用し、そのグリルには日産のロゴが配されました。
プラットフォームはシーマやフーガに採用された日産のFRセダン系のFR-Lを使用。軽量化を実現すべくAピラーなどに1.2GPa級鋼板を採用したことが大きな話題となりました。
サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式、リヤがマルチリンク式を採用。
2019年に設定された400Rには電子制御ダンパーを使用するIDS(インテリジェント・ダイナミック・サスペンション)が標準装備されています。
ステア・バイ・ワイヤー&プロパイロット2.0
現行モデルにはいくつかの市販車初となる装備が施されています。
そのひとつがデビュー時から搭載されたステア・バイ・ワイヤー。
ステアリングとステアリングギヤボックスは電磁クラッチで切り離され電気的に前輪の操舵を行う装備です。
この機能を装備したおかげでステアリングの動きがなめらかになり操舵応答性が高まりました。
もうひとつが2019年のマイナーチェンジで装備されたプロパイロット2.0。高速道路でのナビ連動走行と同一車線内ハンズオフを実現した先進運転支援システムです。
あらかじめナビで目的地をセット。高速道路へ乗り入れた後、プロパイロットのスイッチを入れると介入するこのシステムは車線変更も行ってくれる優れた機能。高速道路を使用する長距離ドライブ時に大きな利便性を感じる装備です。
新車・中古車での購入価格は?
現行スカイラインの中古車相場は90〜605万円。500万円を超える車両はすべて400Rでもっとも高い価格がついた車両は2022年式で走行距離100km未満というものでした。
ただ、400R以外のグレード、とくにマイナーチェンジ前のハイブリッド仕様は全体的に購入しやすい車両が数多く存在します。
100万円以下で購入できる車両は走行距離15万km以上走っている過走行モデルしかありませんが、予算を150〜200万円前後まで引き上げるとハイブリッド仕様なら2014年〜2016年式、2リッター直4モデルなら2014〜2015年式で走行距離5万km以下の車両が多数販売中。
コアなスカイラインファンには人気がない現行モデルですがハイブリッド、2リッター仕様ともに走る楽しさと実用性を兼ね備えたスポーツセダンとしての実力は非常に高く、そんな車両が欲しい人にとってはかなりお買い得な1台といえるでしょう。
日産のセダンの今後はどうなる?
シーマ・フーガは販売終了を発表
2022年8月にラグジュアリーセダンのシーマとフーガの生産中止が発表されました。
これにより日産のラインアップ中、セダンはスカイラインのみとなっています。
セダン好きにとっては悲しい現状ではありますが、日産が販売するセダンは国内で縮小されたものの海外では現在でも数多く販売されています。
海外のみの販売モデルは存在
アルティマ(日本名:ティアナ)
北米市場で日産の主力となるミドルセダンのアルティマ。日本市場にはティアナとして販売されていたモデルです。
北米市場で販売が開始されたばかりの2023年モデルはフロントグリルを拡大。新たなVモーショングリルが目を惹くフェイスリフトを敢行しました。
可変圧縮比エンジンとなる2リッター直4「VCターボ」を搭載するなど、機能面も進化しています。
マキシマ
北米市場でトヨタ・カムリやホンダ・アコードをライバルとするLクラスセダン。
ライバルと比べスポーツ色を全面に打ち出したフォルムで人気が高いセダンです。
元々はブルーバードをベースに6気筒エンジンを搭載した「ブルーバード・マキシマ」として発売され、国内でも販売されていた時期がありました。
シルフィ
国内市場では2020年に生産中止となりラインアップから外れたシルフィですが中国市場ではいまだ健在。
先に紹介したマキシマに共通するスポーティなデザインを採用した現行シルフィは2019年に中国デビューしています。
中国仕様での販売は好調で近々、マイナーチェンジが施されるとみられています。
ラニア
中国市場でシルフィの上級モデルとなるのがラニア。2015年に投入されたラニアはVモーショングリルやブーメラン型ヘッドランプなど、現行シルフィと共通するデザインテーマで仕立てられています。
パワーユニットは1.6リッター直4エンジンを搭載。中国市場専売モデルのため日産の中国開発拠点「日産デザインチャイナ」に所属する若手デザイナーがデザインを担当しました。
ヴァーサ(ラティオ)
北米などで販売されるコンパクトセダン。国内では以前、ラティオとして販売されていました。
マキシマなどと同じスポーティなフォルムを備えた現行モデルは2019年に北米デビュー。パワーユニットは1.6リッター直4エンジンを搭載しています。
中国などでは日本では懐かしい車名のサニーとして販売されているグローバルモデルです。
日産におけるセダンの今後
セダンの人気がなくなった国内市場に日産が新たにセダンを投入する可能性はないと断言できます。正直、次期スカイラインもセダンとして販売される可能性はかなり低いのではないでしょうか。
そもそも現在、セダンの需要は一部ユーザーやビジネスニーズに限られ、そこにはトヨタが国内での使用を考慮したカローラやカローラアクシオを用意しているため、グローバルモデルしか用意できない日産では対抗できないのです。
ただ、海外市場向けのセダンとなると話は別。北米や中国など巨大な市場ではいまだにセダンは売れ筋モデルとなるため、今後も開発や新規モデルが投入されることもあるでしょう。
日本のセダンファンにとって寂しい現状ですが、国内市場の現状を考えると諦めるしかありません。