結構な勾配の下り坂でもアクセルペダルのオンオフのみで走行可能!
さて、導入される5台のELEC CITY TOWNだが、平地に近いところの路線で運用される予定だという。屋久杉ランドなど、山に登っていく路線もテストしたところ、当然EVの豊かなトルクもあり、性能的にはまったく問題ないとのこと。ではなぜ平地? と疑問に思って聞いてみたところ、ハイシーズンは観光客も多く立ち乗りが出るため、安全に配慮して、ということらしい。20に満たないELEC CITY TOWNの座席数ゆえの判断だ。

肝心の車両についても実車にじっくりと触れることができた。ボディサイズは全長8995mm×全幅2490mm×全高34900mmで最小回転半径は7.6m。160kWの出力を誇るZF製のモーターを145kWhの容量のリチウムイオンバッテリーで駆動し、最高速度は80km/hというもの。航続距離は韓国環境部の認証値で208kmとなっている。屋久島での運用は、概ね1日150〜190kmほどを計画しているとのことで、けっこうギリギリ? と思って運転士さんに聞いたところ、「テスト走行ではその距離なら問題ない感じでした」という。面白いのは充電口で、CHAdeMOが2口並ぶ。これはとくにバッテリーをふたつ積んでいるなどではなく、ふたつ繋げば充電スピードが上がるという仕様とのことだ。

エアサスにより乗車サイド(左側)を下げることもできるので、高齢者や小さい子どもの乗降性にも優れている。EVということでもちろん回生も行われ、回生ブレーキの強さは2段階で設定可能。この切り替えはワイパーレバーで行うことができ、コースティングモード(0)、回生弱(1)、回生強(2)、といった具合だ。コースティングモードを選ぶとアクセルオフでは回生せず、ブレーキを踏めば回生が入る仕組み。

この日、納車式会場となったホテルの敷地内で短時間の試乗も行われた(もちろん運転ではなく乗客として)。左側最前列の通称「オタシート」に陣取って、クローズドの敷地内がゆえに運転士さんにアレコレ質問しながら試乗したのだが、結構な勾配の構内路の下りにもかかわらず、回生強にしておくと基本ワンペダルドライブが可能とのこと。

年間降雨量が全国1位の市町村といわれる屋久島だが、納車記念のおめでたい日を空もお祝いしたのか、4月にありながら夏日のような晴天かつ暑いぐらいのこの日。試乗中もエアコンが作動していたが、聞こえる音はほぼ吹き出し口からの風の音。リクエストでエアコンをオフにしてもらうと、リヤからインバーターの音が聞こえるも、ディーゼルエンジン車よりもかなり静かな印象だ。車外で走る横にも立ったが、当然静粛性は高く、屋久島の自然環境にはピッタリのバスだと思える。

さて、これからトレッキングなどの観光客で賑わう季節を迎える屋久島だが、これまでディーゼル車を運転してきた運転士の習熟期間を経てから運行される予定だ。具体的にはGW空けにというので、それ以降に屋久島を訪れるなら、ELEC CITY TOWNを探して、機会があれば乗車してみてほしい。