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子どもの置き去り! 無人車の暴走! 運転士の暴言! 運転士だけを責められない頻発する「路線バスの不祥事」の裏にある根本原因

子どもの置き去り! 無人車の暴走! 運転士の暴言! 運転士だけを責められない頻発する「路線バスの不祥事」の裏にある根本原因

この記事をまとめると

■最近になって路線バスの不祥事が相次いでいる

■2024年問題による働き方改革がドライバーに悪影響を及ぼしている

■国や行政と現場の実情が噛み合っていない限り環境の改善は難しいだろう

バス関連の不祥事が相次ぐ

 ここのところバスに関する不祥事がネットニュースなどを賑わせている。

 たとえば、バス車内に乗客を置き去りにするといったケースでは、2025年4月1日に東京都荒川区にある都営バスの南千住自動車営業所に到着した際、車内確認を怠ったまま運転士が車両から離れ、一時的に女子児童が車内に置き去りになるといったことが発生した。さらに、2025年4月8日には、福島県会津坂下町で送迎用のバスに児童が車内に置き去りにされてしまい、自力で車外へ脱出するという事態に陥った。

 このほかにも、熊本県で運転士が乗客に暴言を吐いたり、長野県松本市では駅前ロータリーにて無人のバスが動き出すという事案まで発生している。

 日本全国で日々多くのバスが運行しており、マスコミが何かのきっかけで、バスの不祥事案件を集中的に追いかけるといったこともあったのかもしれないが、車内置き去りなどは、過去に痛ましい事件があったにもかかわらず、いまだにあとを絶たないことが、今回立て続けに報道されていることから表面化したともいえよう。

 路線、貸切などに限定せず、運転士は乗客を目的地まで安心・安全に送り届けるために神経を研ぎ澄ましてバスを運転している。それでも事故などのトラブルを100%抑止するのは難しいのだが、ここのところの報道を見ている限り、バスに関する不祥事が多いのは事実。

 2024年問題が実際のものとなって1年が経とうとしている。

 バスだけではなく、タクシーやトラックなど、旅客や貨物輸送業界の働き手不足が続くなか、働き方改革で労働時間の制限が顕著となって久しい。インバウンド(訪日外国人観光客)が増加したり、デジタルツールの普及などにより、タクシー業界は活況を呈しているが、それでもまだまだ働き手は足りていない。

 バス業界も運転士の深刻な不足が続き、路線廃止や減便が全国で続いている。給料などの待遇面では改善傾向も見られるが、働き手不足が依然として続いており、就労環境が根本的に変わっているわけでもないので、運転士への負担は続いているのが実情だ。

 働き方改革で勤務時間が減り、いままで得ていた手当がもらえないことで収入が減るといったことも、バスやトラック業界では顕在化している。漠然とした将来への不安のなか、日々の運行業務に従事していれば、いい訳にはなってしまうがフッと気が抜け、それが不祥事を招いてしまうと考えれば、ここ最近目立つ不祥事報道を目にするたびに、抜本的な就労環境の改善にはまだまだ遠い道のりがあると感じる。

 国は国なりに就労環境の改善を進めようとしているのだが、2024年問題が顕在化して1年が経とうとしているいま、あえて振り返ると運行現場とのボタンの掛け違いを解消しない限り、根本的な問題解決は難しいだろう。

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