そもそも燃料タンクが10リットル! 貧乏ランプ点きっぱなし! 驚きしかない全日本ジムカーナ出場車の「ガソリン事情」 (2/2ページ)

想像以上にシビアな燃料セッティング

 また、4WDの改造車を対象にしたBC3クラスも車種や改造範囲によって燃費性能が異なることから、ガソリン搭載量がそれぞれ異なっているようだ。

 たとえば最近の4WDターボ車両はやや燃費性能が高く、GRヤリスでBC3クラスに挑む一色健太郎選手は、1周あたりのガソリン使用量が1.5リットルで、1大会におけるガソリン搭載量は14.5リットル。

「GRヤリスは10リットルでも大丈夫ですが、深いターンや高速コーナーが連続するコースだと、ずっとGがかかってるが故にガス欠症状が出るし、ターボ車両はエアを噛んでしまうとエンジンが壊れる可能性もありますので、余裕をもってガソリンを入れています」と一色選手は語る。

 さらに、「今回の名阪スポーツランドは距離が短いので1周あたり1.5リットルの使用ですが、開幕戦の筑波は全開区間が多いので1周あたり2リットルを使っていました」とのことだ。

 ちなみに一色選手によれば、車種やコンディションによって、ガソリンを多めに入れていたこともあるそう。「ロードスターでジムカーナをやっていたとき、リヤのトラクションがほしいので雨のときは多めにガソリンを多めに入れていました。ガソリンもパーツの一部ですね」と解説してくれた。

 一方、同じBC3クラスといえども旧型の4WDターボ車両は燃費性能が低く、GC8型のインプレッサWRXを駆る大橋渡選手は、1周あたりのガソリン使用量を3リットルで計算している。それでも、ガソリン搭載量は10リットル〜15リットルとなっていることから、攻めた燃料マネジメントだといえるだろう。

「これ以上、ガソリンを少なくすると右コーナーでガス欠症状が出てしまうので、だいたい10リットル以上は入れています。ウエットのときはトラクションを稼ぎたいのでプラス5リットルぐらいを目安に入れていますね」とのことで、大橋選手もコンディションに合わせてガソリン搭載料を変更しているようだ。

 そのほか、ランサーエボリューションでBC3クラスに挑む野中信宏選手は、1周あたりのガソリン使用量を2リットルで計算しており、満タンで10リットルという競技用の燃料タンクを採用。4周ほどしかできない計算で、これまたギリギリの状態。

「私が使っている燃料タンクはそもそも10リットルちょっとしか入りませんからね。開幕戦の筑波は1周あたり3リットルぐらいガソリンを使用しているので、再出走の3周目は厳しいかも……といった状態です。あと、10リットルくらい入れておかないとガソリンが温まってパーコレーションが起きちゃうので、その対策としても、可能な限り満タンにしています」と野中選手。

「競技用のタンクの場合、規定によって5年に1回交換しなければならないので大変です。あとは燃料メーターと繋がっていないのでガソリン残量を目視で確認しなければならないのも手間ですね。けど、ノーマルタンクと違って少ない燃料でもコーナーによる燃料の偏りがないことがメリットで、残り2リットル程度でも問題ないです。そこは大きいですね」とのことである。

 このように一般公道ではリスクが多くて、マネができないガソリンを削る芸当。全日本ジムカーナ選手権では燃料マネジメントがかなりシビアであることがわかる。とくに改造車クラスは、自走することなく、積載車で移動していることもあって、可能な限り軽量化を図るべく、ガソリン搭載量に関してもギリギリの勝負が行われているというのが、競技の世界だ。


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廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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