WEB CARTOP | 独自の企画と情報でクルマを斬る自動車メディア

リッター2kmの燃費とかいまの時代じゃ絶対売れん! 走りに全フリしたユーノス・コスモはロマンの塊だった

リッター2kmの燃費とかいまの時代じゃ絶対売れん! 走りに全フリしたユーノス・コスモはロマンの塊だった

この記事をまとめると

■ユーノス・コスモは3ローターも用意したロータリー専用のフラッグシップクーペ

■燃費は極悪ながらその豪著さとエンジンの滑らかさはまさに夢の領域だった

■現在ではプレミア化が進む希少なバブル期の遺産だといえる

バブルならではの唯一無二の名車

 ガソリン価格の高騰がつづく昨今、ハイブリッド車を始めとする好燃費のクルマがもてはやされているが、かつては「極悪燃費上等!」というクルマも存在した。その代表格が、世界初の実用・量産ロータリーエンジン搭載車として初代コスモスポーツの系譜を継ぐ、ロータリーエンジン専用車として1990年に誕生した4代目ユーノス・コスモであった。

 当時のマツダがもっていたチャンネルである「ユーノス」のフラッグシップとして、「クーペダイナミック」のキャッチコピーを与えられて誕生。全長4815×全幅1795×全高1305mmという体躯のロングノーズ、ショートデッキのロースタイルで、国産車として前例のないスポーティさとエレガンスを両立した、伸びやかで美しいスタイリングを備えていた。

 インテリアもまた、囲まれ感ある4座のパーソナルなスペースに高級ソファのような本革シート、ウッドパネル、デジタルメーター、インパネの左右いっぱいに広がるディスプレイ、三菱電機と共同開発されたCCSを名乗るGPSナビなどが奢られ、近未来感と高級感に溢れた空間を実現していたのである。

 そして最大の特徴が、2種類のロータリーエンジンのみを搭載していたことだ。それは1308ccの2ローターターボ(13B-REW型・230馬力/294Nm)と、1962ccの3ローターターボ(20B-REW型・280馬力/402Nm)というもの。

 3ローターエンジンは、マツダのエンジニアの夢であった「V12エンジン並みの滑らかさ」を、可変排気機能をもつ4本出しマフラーとともに備え、シーケンシャルツインターボとの組み合わせで333馬力を目標に設計されていた。しかし、当時の運輸省による国内自主規制の壁があり、280馬力にデチューンされての発売となった経緯がある。ちなみにエンジンの排気量は約2リッターだが、自動車税は2500超~3000cc以下に区分されていた。

 4速ATのミッション、215/60R15サイズのタイヤによる走行性能は、当時の国産車としてはまさに夢のような滑らかさと高級感、ポルシェターボに匹敵する強力な動力性能を誇ったものだ。だが、燃費性能は10・15モードで2ローターモデルが6.9km/L。3ローターモデルは6.1km/Lという数値だった。

 10・15モード燃費の6.9km/L、6.1km/Lが実燃費とかけ離れていることは容易に想像がつく。実際、実燃費は街乗りで2~3km/L、渋滞路で2km/L、高速走行でも4~5km/L程度だったという。燃料タンクはそれを見越して72リットルもの容量があったものの、満タンで200kmを走れないこともあった。

 同時期のホンダNSXが7.1~8.3km/Lだったのだから、レシプロエンジンとは異なるモーターのような滑らかな回転フィールと強力なトルク感の代償はやはり極悪だったということだ。

 とはいえ、当時としてはクルマ好きにとって夢のような1台であり、燃費の悪さに目をつぶってでも所有する満足度が極めて高いスペシャルなクルマだったことは間違いない。

 1991年には、スポーツサスペンションやBBSのアルミホイールを装着する特別仕様車のTYPE-SXが登場。1995年に生産終了となり、約29年間のコスモの歴史に終止符を打つこととなった。累計販売台数は8842台とされている。

 2025年4月上旬にグーネットで中古車を検索すると、ヒットしたのはわずか5台。値づけは20Bの最終型モデルがASK、13Bモデルが約158万~300万円というものであった。3ローターはやはり「プレ値」ということだろうか。

画像ギャラリー

WRITERS

モバイルバージョンを終了