ルート66ならぬキープ38ってなんぞ? なにげに効果絶大な「歩行者」はもちろん「ドライバーの人生」も救う埼玉県のプロジェクト

この記事をまとめると

■交通事故の死者のうち歩行中の割合が日本は先進国中で非常に高くなっている

■埼玉県が横断歩道優先の「KEEP38プロジェクト」で意識向上を図っている

■ドライバーも歩行者も互いに思いやる姿勢が事故防止のカギだ

交通事故のなかで最多の割合を占めるのが歩行中の事故

 日本で起こる交通事故では、死亡・重傷のどちらも歩行中がもっとも多くなっています(令和5年/警察庁統計)。事故から30日以内死者数のデータでも、歩行中が36%と最多で、これはアメリカ17.4%、ドイツ13.2%と、先進国のなかで比べても異常なほどの多さです。

 どんな状況で亡くなったのか見てみると、横断歩道ではないところを横断中や、路上で寝てしまうような路上横臥(おうが)が多いのですが、横断歩道をちゃんと横断していたにもかかわらず交通事故で亡くなってしまう人も20%程度と、高い割合となっています。

 そんな状況を防ごうと、「KEEP38プロジェクト」を推進しているのが埼玉県。横断歩道における歩行者優先義務が規定された「道路交通法第38条」を守ろうということで、KEEP38(サンハチ)と名づけられました。

 じつは、JAFによる「信号のない横断歩道におけるクルマの一時停止率」の調査結果で、埼玉県は令和元年から令和6年までずっと全国平均を下まわっているのです。ただし、このKEEP38プロジェクトがスタートした令和2年は全国平均21.3%、埼玉県12.4%でしたが、令和6年では全国平均53.0%、埼玉県50.8%にまで急上昇。このプロジェクトの成果が出ているといえるでしょう。

 では、どんな取り組みをしているのかというと、まずは多くのドライバーにこのプロジェクトを周知してもらうため、アメリカのルート66のようなカッコいいデザインのステッカーを作成。埼玉県警にてこのプロジェクトに賛同してもらえる人に配布したり、「KEEP38プロジェクト」モデル事業所に認定された事業所にも配布し、トラックなどの事業所車両に貼って社員の安全運転意識の向上を図っています。

 また、イオンモールなど多くの人が集まる場所にて、KEEP38プロジェクトの普及イベントも行っています。イベントには埼玉県出身の女優、小西桜子さんも登場し、歩行者に優しい安全運転をアピールしていました。

 たとえば、信号のない横断歩道を通るときの4つのルール。「横断歩道に近づいたときは、停止できる速度に減速」すること。「横断歩行者がいるときは、必ず一時停止」すること。「横断歩道手前の追い抜き、追い越しは禁止」。「停止車両がいるときは、必ず一時停止」というものです。

 また、このプロジェクトに全社を挙げて賛同している埼玉トヨタでは、オリジナルのKEEP38ステッカーを作成。埼玉トヨタ創立70周年の記念として生まれたオリジナルキャラクター「とよたまちゃん」があしらわれた、とってもかわいいステッカーです。

 2021年3月末時点で、モデル事業所は126にものぼっていたというので、いまではさらに増えているはず。こうした独自の方法で、楽しみながら歩行者への思いやりを多くのドライバーに広げていくのは素晴らしいですね。

 ただ、スマホを見ながら渡らない、点滅してからの駆け込みをやめるなど、歩行者側のマナー向上も伴っていくことが、横断歩道での事故撲滅には欠かせないと思います。ドライバーも歩行者も、双方がしっかりと相手を思いやる気もちを忘れず、安全確認を怠らないことで悲しい事故をゼロにしていきましょう。


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まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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