プールにどぼん! クラッシュテスト車を展示! タイで鈍化するBEVブームに中国メーカーが取った策は「安全性アピール」 (2/2ページ)

消費者のBEVへの不安視をメーカーも危惧している

 かつて筆者が幼少のころ、1970年代の東京モーターショーの会場内で、ボルボが衝突実験を行ったあとの実験車を展示したことがあった。子どもの筆者だけではなく、その場にいた大人も「新車ではなく壊れたクルマをなぜ置くのだろう」と実験車のまわりで話していたのを覚えている。ほとんどのひとがシートベルトも締めずにクルマに乗っていたころなので、安全性をアピールされても来場者には響かなかったのである。

 GWMグッドキャットの衝突実験車両は、ややブースの奥まったところにひっそりと置いてあり、注目する来場者も少なかった。タイのひとが自動車の安全性にあまり関心がないというつもりはないが、新車を売ろうとするアピールとしては弱いのかもしれない。

 ただし、タイ国内ではBEVについて自動車保険加入を断る保険会社が多く、引き受けてたとしても高額の保険料を請求されるという報道を目にしたことがある。タイ以外でも、BEVの保険加入に厳格な国は一定数あるようだ。

 ICE車からBEVへ乗り換え、その特性の違いに慣れないうちに事故を起こすケースが多発していることも影響しているという噂もあるが、BEVでは気になる車両火災といえども実数把握はなかなか難しい。しかし、タイ国内でも「BEVが結構燃えている」というのは世間話レベルでよく聞く話となっている。

 そのなかでGWMはあえて、衝突安全性だけではなく、「ぶつかっても燃えませんよ」ということをアピールしたかったのかもしれない。

 タイでBEV販売が鈍った要因としては、「燃えやすいのでは」という不安に加え、2024年秋の深刻な水害被害、そしてバンコク市内でも雨季などを中心に道路冠水が多発する状況を見て、「ウチの国でBEVは大丈夫なのか」とブームによる過熱から消費者の目が覚めたことも大きいと聞いている。

 中国のBYDオートは、自社だけのホールを設け、水陸両用となるPHEV「ヤンワンU8」を特設プール内にて実際に水上走行させてみせていたが、これもグッドキャット同様に、「水に入っても大丈夫」というのをアピールしたかったのかもしれない。そうだとすれば、たとえトレードショーであっても、そこだけは押さえておきたいという願いがあったのだろう。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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