この記事をまとめると
■トヨタモビリティ東京が公正取引委員会から警告を受けた
■転売の対抗手段に独占禁止法に違反したり車両所有者に対する権利侵害に当たる行為があった
■新型車の発売スケジュールや国内仕様の生産体制を根本的に見直す必要が生じている
クルマ業界の殿様商売に公正取引委員会がメス
2025年4月10日、トヨタ車を扱う販売会社のトヨタモビリティ東京(トヨタ自動車株式会社の完全子会社)が、公正取引委員会から警告を受けた。警告の内容は、トヨタアルファード、ヴェルファイア、ランドクルーザーの販売に際して、ボディコーティングやメンテナンスパックの購入、トヨタファイナンスとのクレジット契約、購入希望者からの下取りを条件にしていた疑いがあるというものだ。
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同様の注意喚起は、2024年11月に自動車公正取引協議会も行っていた。新車を購入しようとしたら、オプション装備/メンテナンスパック/ボディコーティングなどの契約、車両を購入する販売会社における任意保険の加入、ローンの使用、現金購入なのに1年間は所有権を販売事業者が留保する、といった内容をユーザーが販売会社から強要されたというものだ。注文書を交わして実質的な契約を結んだのに、後日抽選販売に移行して購入できなくなったという苦情もあった。
これらはいずれも、独占禁止法に違反したり、車両の所有者に対する権利侵害に当たる。自動車公正取引協議会は、2024年11月にこの注意喚起をすべてのメーカーや販売会社に対して行っており、トヨタ自動車の完全子会社になるトヨタモビリティ東京は、2025年4月に公正取引委員会から前述の警告を受けることになった。
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これらの問題の根底にあるのは、納期の大幅な遅延や受注の停止だ。アルファード&ヴェルファイアやランドクルーザーシリーズは、納期を遅延させたり受注を停止した結果、転売が増えて中古車価格が高騰した。この流通の混乱を防ぐため、販売会社側が所有権を留保するディーラーローンを使わせたり、販売会社と長く付き合わないとムダになるメンテナンスパックの購入をユーザーに強要した。
これらの車種は、購入時点で転売しない趣旨の誓約書を書かせていたが、現金で購入して所有権も得ているなら転売は法的には自由だ。そこでディーラーローンの使用という、所有権を留保する措置に踏み切った。
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ただし、ディーラーローンを使えば金利がかかり、メンテナンスパックも有料だ。これらをユーザーに強要すれば不利益に繋がるから、誤った行為になる。
中古車価格が高騰する直接の原因は、転売するユーザーや高値で中古車を販売する業者にあるが、納車が順調に行われれば転売も中古車価格の高騰も生じない。自動車メーカーが新車を発売する以上、車両の供給と中古車市場の安定にも責任をもつべきだ。
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とくにトヨタは、少なくとも日本では自動車業界のリーダーだ。良し悪しにかかわらず、ほかのメーカーはトヨタを手本にする。たとえば資料だけで商談せねばならない予約受注開始時期の前倒しも、2009年5月に登場した3代目プリウスが実施して、ほかのメーカーも追従するようになった(いまのトヨタは行っていないが)。
トヨタ自動車の完全子会社になるディーラーが、公正取引委員会から警告を受けた事実は重い。少なくとも以前のトヨタでは、いまのような納期遅延や受注停止、ユーザーに対するローンの強制加入などは生じなかった。もはやコロナ禍のいい訳は通用せず、新型車の発売スケジュールや国内仕様の生産体制を根本的に見直す必要が生じている。これはトヨタに限った話ではない。