全日本ラリーの最高峰クラスに挑む「スバルWRX S4」! 2025年はサスの変更と軽量化で「世界のアライ」も納得の戦闘力アップ

この記事をまとめると

■2023年のデビューしてから全日本ラリー選手権に挑み続けているスバルWRX S4

■2025年型WRX S4ではよりシンプルなストラット式に変更されて安定性が増した

■全日本ラリー選手権での技術開発は次期モデルにフィードバックされる

WRX S4と新井敏弘選手のコンビで全日本ラリー選手権に挑戦中

 2023年の第7戦「ラリー北海道」でデビューして以来、全日本ラリー選手権の最高峰クラス、JN-1クラスに挑み続けるスバルWRX S4。2005年および2007年のPWRC(プロダクションカー世界ラリー選手権)チャンピオン、新井敏弘選手のドライビング、そして新井選手が率いる「スバル・ラリーチーム・アライ」の開発により、絶えず進化を果たしてきたが、2025年はさらなるアップデートが実施されている。

 というわけで、4月11〜13日、佐賀県唐津市を舞台に開催された第2戦「ツール・ド・九州」で新井選手および同チームをサポートするスバルの嶋村 誠氏を直撃。マシンの改良ポイント、そして、VBH型WRXの今後の可能性を探ってみた。

 まず、2025年における最大のポイントがリヤのサスペンション形式の変更だといえるだろう。これまでVBH型WRX S4ではベース車両のマルチリンク式を活かして足まわりが開発されていたが、2025年型モデルでは、よりシンプルなストラット式に変更。これによりサスペンションストロークが拡大され、ラフな路面での安定性が向上。

 さらに、ボディまわりの細かい部分を削ぎ落とすことでマシンの軽量化も実施されたことも2025年型モデルのポイントだろう。

 これに加えて第2戦のツール・ド・九州では、足まわりの剛性が強化された。スバルの嶋村氏によれば「足まわりの改良に関しては、ほぼひと昔前のWRカーといったようなところまで進んできました。第2戦に合わせて足まわりの剛性を高めたことで、開幕戦のラリー三河湾より車両重量は重くなりましたが、それでも2024年型モデルに対して20kgは軽量化しています。2024年型モデルと比較しても確実にタイムはよくなっていますし、車両重量が軽く、実績のあるEJ20型エンジンを搭載したVAB型のWRXと比べても、2025年型のS4は速くなっています」と語る。

 ステアリングを握る新井選手も「従来のマルチリンクでも接地性はよかったけれど、ストラット化によりストロークが長くなったことで、路面からタイヤが離れなくなったからね。追従性がよくなっているから走りやすくなった。開幕戦の三河湾ではリヤまわりがやわらかすぎたから、唐津を前に剛性を高めたこともあって、乗りやすくなっている」とインプレッション。

 さらに「このサスペンションのストラット化はターマックではあまり優位性は出てこないけれど、グラベルでは効果が出てくると思う」と付け加える。

 残念ながらツール・ド・九州では、セッティングを煮詰めきれず、新井選手×VBH型WRX S4は苦戦を強いられていたが、それでも新井選手は6位入賞。

「WRX S4も速くはなってきているけれど、Rally2やR5に追いつくまで速くはなっていない」と新井選手が語るように、もともと純レーシングカーとして開発された国際規定のRally2/R5と量産車を改造した国内規定のJP4とでは、パフォーマンス面で大きなギャップがあり、そもそも同じクラスで競わせることに無理がある状況だが、その一方で、「軽量化はもう難しいからエンジンを速くしたい。ターボを煮詰めていきたい」と新井選手、「エンジンだけでなく、パワートレインを含めて開発していきたい」と嶋村氏は語っているだけに、いまだWRX S4にはノビシロがありそうだ。

 そして、全日本ラリー選手権での技術開発は、次期モデルへのフィードバックに効果的である。スバルの社内チーム、Team SDA Engineeringがスーパー耐久のST-Qクラスに「SUBARU HighPerformance X Future Concept」、通称「ハイパフォX」を投入し、次期モデルに向けて、エンジンの開発およびAWDの駆動制御技術、そしてシャシーの開発を行っているが、全日本ラリー選手権に新井選手が投入するこのVBH型WRX S4も次期モデルへの開発がターゲットとなっているだけに、次世代のWRXはスバルのフラッグシップスポーツとして、レース/ラリーの知見を活かしたモデルとなるに違いない。


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廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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