
この記事をまとめると
■シトロエンを代表するモデルである2CVはこれまで数多くの映画やマンガに登場した
■2CVは紀元前の馬引き戦車「チャリオット」に変身したことがある
■チャリオット化されているにもかかわらず誰が見てもそれが2CVだとわかる
癒やし系キャラの2CVを超戦闘的な馬引戦車にトランスフォーム
シトロエン2CVといえば、クルマ好きならすぐにブリキ細工のようなデザインや、小洒落たツートーンのボディカラーなどが頭に思い浮かぶはず。また、車名こそ知らなくとも、映画やマンガに登場した2CVを目にしたことがある方はそれこそごまんといることでしょう。それだけ2CVの存在は広く世界に知れ渡り、誕生(1948)から77年が経ったいまでも魅力が褪せていないということ。
そんな2CVが、今度は紀元前の馬引き戦車、いわゆるチャリオットに変身したことがあります。古代の姿になってもひと目で2CVとわかってしまうなんて、ほんと偉大なクルマです。
2CVチャリオットが登場したのは、フランスの国民的コミック「アステリックス」の実写映画「アステリックスとオベリスク:ミドルキングダム」。ちなみに、同コミックは1959年に初版が発行され、現在でも発行すれば500万部オーバーの売れ行きという大人気。映画化されたのも15本目といいますから、鉄板中の鉄板モノに違いありません。
それだけの人気ムービーですから、コミック原作ながらフランスの名優たちのほとんどが出演経験アリなのです。カトリーヌ・ドヌーブやアラン・ドロン、パトリック・デュパルデューなんて今作で主役のオベリスクを演じているほど。
それほどの国民的コンテンツですから、シトロエン2CVが出てきてもおかしくはないでしょう。が、アステリックスは紀元前50年ごろ、フランスがガリアと呼ばれていた頃のストーリー。いくらネイティブな2CVといえども、そのまま登場するには無理がある。ということで、2CVはアステリックスたちが団結して中国へ向かうチャリオットへと姿を変えることに。
ボディはフロントスカットルが省かれ、フロントエンドは馬2頭が引っ張るスペースになったばかりか、キャビンはガラス抜きのシースルー(笑)。そして、鉄板は時代を反映してかオーク材へと置き換えられたほか、巻き上げられたソフトトップは、フランスのバッグメーカーLUTECE(リュテス)の布地を使うという凝りようです。
さらに、紀元前ということでタイヤ&ホイールは戦いで使い終わった盾をリサイクル。サスペンションはイノシシの胃袋を膨らませたクッションみたいなもの。そして、ヘッドライトは魔法使いが蛍の光を封じ込めたという特製ランプがAピラーの根元に用意されました。リヤエンドにはシトロエンのマーク、シェブロンを背負っているのですが、ここにアステリックスのトレードマークとなっている羽根があしらわれるという周到さ。
驚くべきは、ご覧のとおり徹底的にチャリオット化されているにもかかわらず、誰が見ても2CVだとわかるところかと(笑)。これならシトロエンもOK出すだろうなと納得するのと同時に、フランスって文化的なことはとことんやりきるのだと感心することしきりです。
むろん、映画会社が勝手にチャリオットを作ったわけでなく、シトロエンそのものが協力しており、デザインをグローバルデザインディレクターであるピエール・ルクレールが担当するという力の入れよう。自社のレガシーたる2CVをここまでいじくれるとは、なんと懐の深いメーカーでしょうか。
2CVはこれまでにもジェームズ・ボンドやクラリス姫がカーチェイスを繰り広げるなど、さまざまな作品に登場してきましたが、チャリオットは新たな歴史を刻んだといっても過言ではありません。これからも2CVはちょいちょい出てくるのでしょうが、果たしてどんなスタイルで活躍してくれるのか、シトロエンのファンならずとも楽しみで仕方ありません。