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鬼才ゴードン・マレーが描く「究極のクルマ像」がコレ! たった350kgしかない「ロケット」の「走りに全振り」な中身

鬼才ゴードン・マレーが描く「究極のクルマ像」がコレ! たった350kgしかない「ロケット」の「走りに全振り」な中身

この記事をまとめると

■ゴードン・マレーが「バイクのようなクルマ」を目指して設計したロケット

■重量はわずか350kgでヤマハ製エンジンと5速シーケンシャルを搭載

■設計から細部にいたるまでマレーの哲学が貫かれた唯一無二の1台

ゴードン・マレーの思い描いた究極のクルマ

 ゴードン・マレー。この天才的なエンジニアの名を知らない者はF1、あるいはスーパースポーツの世界に興味のある者には皆無だろう。

 その代表的なロードカーといえば、まずその名前があげられるのはマクラーレンのF1。その緻密の極致ともいえる設計は、まさにゴードン・マレーのストイックな性格を表した、なによりの実例といえた。

 だが、マレーの胸中には、同時にほかにもいくつもの究極的な自動車像というものがあった。ここで紹介する「ロケット」はその象徴的な例であり、それはマレーと元レーシングドライバーのクリス・クラフトとともに1991年、イギリスのケンブリッジに設立された、ライトカーカンパニーから世に送り出されることになった。

 その社名からもわかるとおり、彼らのプロダクトは軽量な、というよりもそれまでの常識を覆すほどの車重、実際には350kgという数字を実現したモデルで、マレーが開発時に掲げたコンセプトは、バイクのような軽快さをもつ自動車。そのスタイルを見れば、たしかにそれも十分に理解できる。

 ロケットはフォーミュラーカーのそれから着想を得た、三角形のスチール製スペースフレームを基本骨格とし、それにエアロダイナミクスに優れるオープンコクピットのグラスファイバー製ボディを組み合わせて、まずそのプロトタイプが誕生した。

 このモデルは1990年代後半までハンドメイドで製造されたが、レギュレーションの変更で、一時その生産は停止。さまざまな改良を施して2000年代にようやくそのプロダクションモデルは完成した。

 グラスファイバー製のボディは、ノーズコーン、エンジンカバー、リヤコクピットカバーの取り外しが可能で、ノーズコーンにはヘッドライトが収納できる仕組みになっている。

 プレクシグラス製ウインドウスクリーンや、ボディと同色にペイントされるサイドミラー、そして社外品ではあるがフィラーキャップなどはプロダクション仕様のために新採用されたもので、さらにカーボンコンポジット製のサイクルフェンダーも、プロトタイプ時からはその取り付け位置が変化している。

 コクピットにはブラックの内装が施された、やはりカーボンコンポジットのドライバーズシートがあり、その後方には同色のパッセンジャーシートが装備されている。ドライバーの右側には、5速MTのシフトレバーとファイナルドライブ比を変更するための副変速機が備わり、ここでもマレーが超ライトウエイトスポーツたるロケットの走りに強いこだわりを見せたことが感じとれる。

 ミッドマウントされるエンジンは、ヤマハ製の直列4気筒。アルミニウム製クランクケースやブロック、シリンダーヘッド、デュアルオーバーヘッドカムシャフト、そして気筒あたり5バルブ機構が採用されており、ヤマハのバイクではFZR1000がこれを搭載している。

 そしてマレーは、それを5速のシーケンシャルミッションとともに、ロケットのパワーユニットに流用したのだ。前で触れた副変速機は、そのミッションにはリバースギヤが存在しないことにも直接的な理由があった。したがって、この副変速機では、ハイ、ロー、リバースの各ポジションを選択できる。

 ライトカーカンパニーでは、このエンジンをベースに3つのチューニングステージを設定。その選択はもちろんカスタマーに委ねられたが、もっともスタンダードな仕様でも、その最高出力は145馬力を発揮したという。車重がわずかに350kgであることを考えれば、その運動性能は驚異的なものであったことは確かだろう。

 現在は自らの名を社名としたロードカーブランド、ゴードン・マレー・オートモーティブ社を2017年に設立し、スポーツカーのさらなる究極を追求し続けるマレー。彼の作品には、世界中のカー・エンスージアストが魅了されてやまない。

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