トロリーバスの後継はBYDのEVバス! 世界的に人気の観光スポット「立山黒部アルペンルート」で運行がスタートしたので乗りに行ってみた (2/2ページ)

話題の電気バスに早速乗ってみた!

 待望のロールアウトとなったBYDの電気バスであるK8。導入した経緯まではなんとなくわかったが、いわれのないものも含めて何かと批判されがちなEV業界。気になることを石井副社長にいくつか聞いてみた。

 まず重要なのがメンテナンス性だ。いままでのトロリーバスは関西電力が開発し、メンテナンスはすべて立山黒部アルペンルート内にピットを設け、この場で行っていたそう。しかしこのBYDのバスは、基本的に大がかりなメンテナンスが不要なこともあり、軽整備であれば、いままであったピットを起点とし、重大なトラブルがあれば自社のスタッフを即派遣といった体制をとっているとのこと。とはいえ、2台予備の車両もあるので、運行できないというトラブルはそうそう起こらなそうだ。

 トロリーバスは架線による給電で動いていたが、このバスはEVなので充電が必要だ。よって、この導入にあたり、ルート内にあるピットなどに、急速充電器のCHAdeMOをバスと同じ8機導入しているとのことだ。運航が終わったら、毎日充電して翌日に備えるという体制を取っている。出力は35kWとのこと。

 なお、立山黒部アルペンルートという特殊な環境ではあるが、車両側に何か特別なことをしているわけではなく、寒冷地仕様などにもなっていない。市販されているバスをそのまま導入している。改造点でいえば、車内に観光案内用のモニター増設、ラッピング(全8種類)を施行したくらいだという。

 車両導入にあたってのテスト内容としては、登坂能力や制動力の確認、狭いコースなので、操安性のチェックがメインだったとのこと。そのほかにも、すでに導入している全国の事業者へのヒアリングも関係者同士で行い、信頼性を確認してきたそうだ。

 このトンネルへは、立山駅側から自走でもち込んでいるそう。そんな事情などもあり、ここは私道なのでナンバーは必要ないが、一応全車ナンバー付き、それも用途が特殊なため白ナンバーなんだとか(トロリーバスでは非装着だった)。そういった事情もあり、車検や法令点検などを受ける必要があるとのこと。よって、自走で降りていくことがあるようだ。このシーンは貴重かもしれない。

 ちなみにこのK8、日本全国ですでに約350台が導入されているそうで、知らずに乗っている可能性も十分にあり得る。定員は最大80名、航続可能距離は240kmほどとなっており、バッテリーから車体まで全部自社で製造しているのが特徴だ。

 注目のBYD製バスに乗ってみたところ、EVならではのフルフラットフロアということもあり、乗り降り楽ちんで車内も広く、開放感に満ちている。車内の照明もLEDなので、真っ暗なトンネル内でも明るく、車内環境はとても快適。

 トロリーバスファンからしたら悲しいかもしれないが、あのトロリーバスの独特な走行音もないので、車内は極めて静かで観光案内のビデオ音声もよく聞こえる。トンネル内には切削時の破断帯などがあるので、小さな声であれこれ語り合うなんてのもできそうだ。

 10分ほどの乗車なのでそれほど重要な要素ではないが、シートの座り心地も特段問題なく、中国製EVバスだからといって、当然ながらとくに目立つ欠点は何もなかった。

 面白かったのは、市販モデルをそのまま導入しただけあって、バスの降車ボタンがそのままであったり、座席の脇にUSBポートがついていて、スマートフォンなどが充電できる環境になっているのがユニーク。とはいえ、このルートでは刺したところで、距離的にほとんど充電できないとは思うが‥…。

 運転士さんにドライブフィールを聞いてみたら、「普通のバスよりも出足が軽やかなので、とても扱いやすくて乗りやすい車両ですよ」と、お気に入りの様子であった。

 と、そんなBYDのEVバス運行初日ではあったが、この日は、当初の予定であった立山駅から美女平を抜け、室堂から大観峰へ抜ける行程だったところが、荒天により通行不可に! なんと立山から陸路で反対の長野県側にある扇沢駅までまわるという、とんでもない行程になってしまった。距離にして170km、3時間以上の道のりだ。個人の旅行ならおそらく諦めるレベル……。

 道中は、BYDの最新モデル「SEALION 7」で向かうことになったが、立山黒部アルペンルートの未来を担う、最新EVバスを運行初日に乗れたのはとても光栄だ。

 立山黒部アルペンルート観光の際はぜひ、BYDの最新EVバスもチェックしてみてほしい。


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WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

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