この記事をまとめると
■AUTOMOBILE COUNCIL 2025でマツダはデザインテーマの展示を展開
■コンセプトカーや過去の名車を通じて「クルマの美しさ」を深掘り
■プロポーションや面の美しさが人を動かすデザインと訴求した
クルマはアートになれるか? マツダのあくなき挑戦
4月11日から13日の3日間、幕張メッセで開催された「AUTOMOBILE COUNCIL 2025」。「量」より「質」にこだわったイベントとして今年も多くの名車が展示されましたが、とりわけデザインの視点から出品車をチェックしてみたいと思います。今回取り上げるのはマツダブースです。
●クーペボディでクルマ本来の美しさを演出
今回はデザイン視点でメーカーブースを探訪してきましたが、マツダの展示は「MAZDA DESIGN STORY 心を揺さぶる、モノづくりへの追求」と、そのデザイン自体をテーマにしたもの。その点でほかのブースとはアプローチが異なります。
「もともと、マツダはこのイベントでデザインの大切さを訴求してきましたが、今回はアトリエ的な見せ方で美しいデザインを提示したいと考えました。そこで、マツダの原点であるR360クーペのDNAを受け継ぎ、美しさの代名詞としてクーペやクーペに近いタイプのモデルを選んだワケです」(デザイン本部 アドバンスデザインスタジオ部長 兼チーフデザイナー 岩尾典史さん)
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岩尾氏が手掛けた「マツダ先駆」は、2005年発表のコンセプトカー。「大人のための4シーターロータリースポーツ」をテーマとし、デザインコンセプトを「シャープネス&メローネス」としました。
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「2000年にブランドスローガンのZoom-Zoomを掲げ、その後のデザインを模索していたころですね。新しい時代に向けた緊張感と優雅さの融合の提案で、内圧をもつカタマリ感を大切にした造形です」(岩尾氏)
●引き算の美学を象徴する2台
いっぽう、「マツダ 魁 CONCEPT」と「マツダ VISION COUPE」は2017年の東京モーターショーに出品された2台。いずれも日本の美意識を追求し、よりアーティスティックなアプローチを取っています。
魁 CONCEPTは、後のマツダ3に続くコンパクトハッチのコンセプトカーで、「色気のある塊感」をテーマとしました。キャビンとボディをひとつのカタマリと考え、大きな面を使った造形はクラスを越えた表現。その官能性からイタリアンなイメージも感じられます。
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VISION COUPEで追い求めたのは「エレガントで上質なスタイル」。同じ時期のコンセプトカーでありながら、大きなカタマリというよりは、よりスリムなキャビンと長いホイールベースのプロポーションを最大限に利用した理想像的な造形といえるでしょう。
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「CAR as ARTとしてクルマのデザインをアートの領域まで引き上げる試みです。先駆が未来を提示していたのに対し、VISION COUPEは本来クルマがもつ美しさを追求しました。ある面で懐かしさを感じるのはそのためですね」(岩尾氏)
さて、唯一市販車の展示となった「ユーノス500」は、4ドアクーペの先駆けとして1992年の発表当時に高い評価を受けました。参考展示された初代ルーチェのプロトタイプである「S8P」を手掛けたジウジアーロ氏が、「コンパクトクラスでもっとも美しいセダン」と絶賛したことは有名です。
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「この時期は特別なコンセプトカーがなかったんですね。そのなかで「ときめきのデザイン」から「ひびきのデザイン」にかけての時代を代表するクルマだといえます。今回展示したモデルの共通点は、どれも人を感動させる美しい面、プロポーションをもっていることです。時代を問わないタイムレスな造形こそが大切であり、それが伝わると嬉しいですね」(岩尾氏)
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魂動デザインを中心にカーデザインの奥深さを広く提示し続けるマツダですが、今回も独自の視点で自社の歴史を打ち出すことに成功したようです。