東南アジアのお金もちはでかいミニバンがお好き! 会場にズラリ並んだアルヴェルのライバル「中国・韓国メーカーのラグジュアリーミニバン」を一挙紹介【バンコク国際モーターショー2025】 (2/2ページ)

BYDグループの高級ブランドにも注目!

 対照的に、ボクシーな7人乗りでクロームメッキの光沢がややキラキラ気味なのは、元英国のスポーツカーブランドだったことなど忘れられてアジアンEVの雄となった、MGの「マクサス9」だ。こちらはSAICモーターのアジア・パシフィック地域戦略車の一環で、ややこしい話、傘下のSAICマクサスより「G90」という、2リッターガソリンにMHEVを組み合わせたモデル、あるいはマクサス・ブランドよりブルネイなどで展開する純ICE版の「ミーファ」、あるいは中国で走っているマクサスの「ミーファ9」と共通プラットフォームの兄弟車だったりする。

 その末弟にてプレミアムe-MPV、というのがタイ市場に投入されるMGマクサスの立ち位置のようだ。NEDCサイクルながら90kWhのバッテリー容量で540kmというのは悪くないが、むしろシティコミューターMPVに徹しつつ豪華、という点がウリだ。

 インテリアは、流麗というか曲線的。アルファードとメルセデスVクラスを足して2で割った感覚はどの中華ラグジュアリー・ミニバンにも共通するが、クロームメッキの多用と前後だけでなく、左右スライドまでする2列目キャプテンシートが、マクサス9の強みといえるだろう。

 また、さらに見逃せない中華ミニバンの雄といえば、ご存じBYDグループの高級ブランドであるデンツァが仕掛ける「D9」だ。中国では2022年から発売され、BEV以外に1.5リッターエンジンを用いたPHEV版もある。バンコクでステージの一等地に置かれていたのはBEV、しかもリヤモーターの4WD版だった。本来のFFベースの前車軸側は230kW(約313馬力)・360Nmで、後車軸モーターは45kW(約61馬力)・110Nmとなる。フラッグシップモデルといって差し支えないだろう。

 内装も独特の豪華さで、ベージュとワインレッドとグレーの組み合わせは好悪がわかれそうだが、パイピングの施されたレザーシートにダイヤモンドステッチは、ちょっとベントレーめいた趣がなくもない。すると背後からVIPバッジを首から提げたタイの御大尽が、話しかけてきた。

「アルファードにも乗っているんだけど、増車でこれも買うことにしたんだ。何せ半額だからな」。

 確かにD9は270万バーツ(約1200万円強)に対し、アルファードはベースモデルが427万バーツ(約1921万円強)なので、あれこれオプションや装備を足して乗り出したら2倍という感覚なのだろう。燃費や充電の使い勝手を比べて、どちらが手もとに残るか見るのだという。

 最後になったのは、トヨタの中国生産パートナーの一社だったGACの「M8」。5.2m強のロング全長は定石通りだが、全幅は1893mmとやや控えめで、全高は1823mmとなる。今年のバンコクでそろい踏みしたアジアン・ラグジュアリー・ミニバンでは珍しくPHEV版の展示車両だった。

 M8自体は2010年代から存在していて、もとはメルセデスVクラスに似たMPVだったが、2022年のフルモデルチェンジで完全にアルファード寄りのエクステリアデザインとなり、本家以上にイカついグリルを採用、今回はベージュ&ワインレッドのツートンカラー仕様となった。

 しかも、今回の展示車両は、2列目キャプテンシートは介護仕様よろしく、電動リモコンを操作して車外の地面に下ろして、そのまま車椅子として出られる仕様だった。中国や東南アジアでは、障害者向けだけでもなく年配・年長者に楽をさせられるこうした装備が、つとに人気が高いのだとか。後発らしく付加価値で勝負しているのだ。

 説明員がデモをしていて、キャプテンシートが電動で車外に降り立つところまではよかったのだが、車内側のレールに再び戻るところが掃除機ロボットのように自動でないところ、もち上げても車輪が畳まれず、まわりで見ていた観客もいつしかゼロになってしまった。

 信頼性という面でアジアの夜明けはまだまだといったところだが、日が出れば一気に高く昇るのは、天気や気候だけではない、東南アジアあるあるなのだ。


この記事の画像ギャラリー

南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

-

愛車
アウディA6(C5世代)
趣味
ランニング
好きな有名人
コロッケ、サンシャイン池崎

新着情報