この記事をまとめると
■サスペンションはスプリングとダンパーで成り立ち、減衰力により上下動を抑えている
■ガスが抜けてシャフトが戻らない状態を「抜けている」と呼ぶ
■社外品ならば早めのオーバーホールで状態維持すれば結果的にコストも抑えられる
「抜けてる」サスペンションは本来の機能を果たしていない
ヤフオクで買った中古サスペンションを見た先輩が、「こりゃ、手で押しても戻ってこないから、このサスは抜けてんなぁ」なんていっていた。そんな経験はないだろうか。
「サスペンションが抜けている」とは、そもそもどういう状態を指すのか。手で押してわかることなのだろうか。
クルマは、その車重をスプリングが支えている。だが、そのスプリングだけだと上下動が止まらず、運転できたものではない。そこで、「ダンパー」や「ショックアブソーバー」と呼ばれる装置がスプリングと一緒に取り付けられている。
サスペンションシステムのイメージ画像はこちら
簡単にいえば、オイルのなかを穴の空いたレンコンのようなピストンバルブがサスペンションの動きに合わせてストロークする。そのときに、オイルの抵抗によってサスペンションの上下の動きを抑えて、ゆっくり沈むようにしたり伸びるようにしたりしている。上下の動きを減衰させて徐々に動きを弱めていく「減衰力」と呼ばれる力をもたせ、クルマがずっとポヨンポヨンと動かないようにしているのだ。
ショックアブソーバーの内部のイメージ画像はこちら
このとき、サスペンションが沈み込むとピストンバルブも沈む。同時に、そのピストンバルブが取り付けられているシャフトも沈んでくる。そうなると、ダンパー内部のオイル室にシャフト分の体積が増える。この体積を吸収するために、内部には窒素ガスが入れられている。ガスが潰れてくれないとオイル室の体積が増えて、それ以上ストロークできなくなってしまう。
サスペンションが機能するイメージ画像はこちら
ダンパーの内部には、単筒式も複筒式もオイルと窒素ガスが充填されていて、沈み込むことで増えるシャフト分の体積をガスが潰れることで吸収している。そのガスが潰されて戻ろうとする反発力があるからこそ、押し込んだシャフトが戻ってくるのだ。
「抜けている」とはこの押し込んだサスが伸びない状態を指している。経年劣化でガスが徐々に抜けてしまったり、単筒式の場合はオイルとガスが混ざってしまったりして、本来の状態でなくなっている状態だ。
押し込んで戻ってこない状態であれば、まず本来の減衰力は発揮されていない。走っていても減衰力が弱く、上下にポヨンポヨンと動いてしまうことが予想される。直すにはオーバーホールが必要である。
分解されたサスペンションのイメージ画像はこちら
これは純正サスでもアフターパーツのサスでも起きる現象で、そうなってしまったら交換するか直さねば本来の性能は得られない。純正サスで多いのが、使い込むことで徐々に摺動部がこなれてきてフリクションが減り、段差などで感じる角が取れてきたということ。欧州車のダンパーは使い込んで徐々に角が取れてくるなどという人もいるが、それは徐々に抜けてきているのと紙一重でもある。
純正サスペンションの場合は基本的にオーバーホールできないので、新品に交換となる。アフターパーツの場合、オーバーホール対応品も多いが、さまざまなオイルシールなども交換する。傷があればシャフトごと交換したりと、結局新品購入に近い価格になることも多い。
新品のショックとスプリング画像はこちら
徐々に性能は低下していくので、数年か数万kmごとにオーバーホールしたほうが1回あたりのコストは安い。早めにオーバーホールして常にいい状態を保ったほうが、オーバーホール時の交換部品も少なくて済み、結果としてコストも抑えることができるのだ。