タイに「いすゞ村」までできたブランド力! どの現地法人と組むかで自動車メーカーの本気度がわかる

この記事をまとめると

■中国・ジーリーはタイでの車両販売においてトンブリグループと販売代理店契約を結んだ

■大手や老舗をディストリビューターにすると値引きに頼らない販売促進活動を進めやすい

■どんな販売ネットワークを構築しているかでブランドの本気度を知ることができる

続々とタイに上陸を果たす中国ブランド

 第46回バンコク国際モーターショーのプレスデーに行われた、中国ジーリー(吉利汽車)のプレスカンファレンスに参加すると、「GEELY」のロゴとともに「THONBURI NEUSTERN」というロゴが掲げられていた。

 トンブリ(THONBURI)グループはタイにてメルセデス・ベンツ車の現地生産も行うほどの巨大企業グループであり、そのような巨大グループのひとつであるトンブリ・ヌースターンがタイにおけるジーリー車の公式販売店として提携を結んだのである。ちなみにブランド別販売トップとなっているトヨタを猛追する中国BYDオート(比亜迪汽車)は、タイにおいて、大手ディストリビューターである「REVER AUTO」と販売代理店契約を結んでいる。

「性能がいい」「格好いい」というだけでは新車がなかなか売れないというのは万国共通といってもいいだろう。とくに自国ではなく海外での販売においては、各地の優秀な実状に精通した現地パートナーがあってこそ量販を可能としているのである。

 マレーシアでは、中国BEV(バッテリー電気自動車)メーカーであるリープモーター(零跑汽車)の車両を、メルセデス・ベンツやプジョー車のマレーシア国内販売を手がける老舗の「Cycle & Carriage」というディーラーが取り扱っている。リープモーターはステランティスグループ傘下のメーカーであり、プジョーもステランティスグループ傘下というつながりがあって販売しているようだ。老舗ディーラーで扱っているということもあり、販売も好調に推移しているようである。

 大手や老舗をディストリビューターとすると、まず消費者からの信頼も厚く、極端な値引きに頼らない販売促進活動を進めやすくなり、ブランドステイタスの構築が図りやすいというメリットがある。とくに中国メーカー系ブランド車は、新車販売全体の不振やBEVの販売鈍化もあり、まさに乱売傾向が目立っている。そのなかでもBYDは、乱売には最後まで慎重な姿勢を貫いていた(いまはあまりに乱売傾向が顕著なのである程度はつきあっているようだが……)。

 日本勢でも、たとえばタイではピックアップトラック販売でトヨタとトップ争いを展開するいすゞは、1974年にタイの大手グループとなる「トリペッチ」とともに「トリペッチいすゞセールス」を創設し、タイ国内でのいすゞ車販売を展開している。「いすゞは値引き販売を行いません」という地元事情通の話からも(あくまでも事情通の話として)、ブランドを大切にしながら販売を展開していた。都市伝説のような話だが、タイの地方の農村では、村人がいすゞ車しか乗らない「いすゞ村」があるとされるほど、タイにおけるいすゞブランドの地位は高い。もちろんいすゞ以外の日本メーカーも状況は似たようなものとなっている。

 販売体制が整っていないなか、販売台数拡大をはかろうとすれば自ずと乱売という道を辿りがちとなってしまう。現状、タイにおける中国系ブランドの多くが乱売の渦に巻き込まれている。そのなか、中国系ブランドとしては新参者となるジーリーは、トンブリという実力のあるパートナーにタイ国内での販売を委ねたのである。

 どのような販売ネットワークの構築をはかっているのか、そこを見てもブランドごとの本気度というものを知ることができるのである。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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