「スタッドがない」って意味のスタッドレスタイヤ! そもそも「スタッド」ってなに?

この記事をまとめると

■スタッドレスタイヤの「スタッド」とはスパイクタイヤの鋲のこと

■かつて主流だったスパイクタイヤは粉塵公害などの問題で使用が規制された

■現在は一部の緊急車両などを除いて多くの地域でスパイクタイヤは使用不可

スパイクタイヤにはデメリットも多かった

 GWも近づいてきて、そろそろスタッドレスタイヤから夏タイヤに交換した人も多いはずだ。さて、では定番の冬タイヤ、スタッドレスとはいったいなにが「レス」なのか?

 スタッドとは日本語で「鋲」のこと。つまり、金属製の留め具の一種だ。スタッドレスタイヤが普及するまでは、タイヤに鋲を埋め込んだスパイクタイヤが主流だったので、「スパイク=スタッドをレスした(除いた)タイヤ」、スタッドレスタイヤとよばれるようになった。

 氷雪路、とくにアイスバーンでのグリップ性能はいまでもスパイクタイヤのほうがスタッドレスタイヤより優れているといわれているが、いまから35年前、1990年に「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」が公布され、1991年4月1日に禁止規定も施行され姿を消したという歴史がある。

 スパイクタイヤが禁止されたのは、スパイクタイヤが原因の環境問題が大きく取り沙汰されるようになったからだ。

 スパイクタイヤは、その鋲が雪や氷に食い込んで強力なグリップを発揮するというものだったが、雪や氷が解けた路面をスパイクタイヤで走行すると、金属の鋲がアスファルトの表面を削ってしまい、粉塵が大量に発生するという問題が発生したのだ。

 とくに粉塵が多かった宮城県仙台市では「仙台砂漠」と呼ばれるほど粉塵が舞い、昼間でも薄暗くなり、人々がマスクをしないと外出できないなどという状況に。それが大きな社会問題となり、長野県でも弁護士がスパイクタイヤ粉じん被害等調停申請を出すといったところまで発展した。

 粉塵だけでなく、道路塗装材を削って白線や横断歩道が消えてしまったり、轍が深く掘れたり、さらに騒音の面でもスパイクタイヤは問題があった。

 その結果、「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」が施行され、スパイクタイヤの製造と使用が制限されるようになったというわけ。ただし、この法律が施行されたあとも、スパイクタイヤが全面的に使用禁止になったのではない。

「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」の第7条には、「スパイクタイヤの使用の禁止」として

何人も、指定地域内の路面にセメント・コンクリート舗装又はアスファルト・コンクリート舗装が施されている道路の積雪又は凍結の状態にない部分(トンネル内の道路その他の政令で定める道路の部分を除く。)において、スパイクタイヤの使用をしてはならない。ただし、消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車に係るスパイクタイヤの使用については、この限りでない

 と記されている。

 つまり、北海道や東北地方、北陸地方を筆頭に、山梨県、長野県、岐阜県、鳥取県、島根県などの指定地域内で、雪道もしくは凍結道路限定であれば、スパイクタイヤは合法的に使用が可能なのだ。

 とはいえ、除雪されている舗装路をスパイクタイヤで走ることは違法になるので、雪国であっても一般のクルマがスパイクタイヤを装着するのは現実的とはいいがたい。ちなみに、先述の第七条の規定に違反した者は、十万円以下の罰金に処する、と定められているので要注意。

 また、タイヤメーカーも、スパイクタイヤの製造・販売を日本国内では行っていないので、そもそも簡単に入手できないというのが現状だ。いっぽうで上掲のとおり、消防自動車や救急自動車など、政令で認められている車両に関しては禁止規定の対象外なので、地域や路面の氷雪の有無にかかわらずスパイクタイヤの使用が許されている。


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藤田竜太 FUJITA RYUTA

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