
この記事をまとめると
■国産車における純正採用のブレンボブレーキは住友電工が製造していることが多い
■住友電工がライセンス生産しているので「スミンボ」とも呼ばれる
■性能はお墨付きだがサーキットでハードに使うのには不向きだ
ブレンボじゃなくてスミンボってなんだ?
⚫︎ブレンボ社とライセンス契約を結び、国内で製造されたブレンボの俗称
最初に結論から書くと「スミンボ」は国産ブレーキメーカーである「住友電工ブレーキシステムズ(現・ASブレーキシステムズ、以下:住友電工)」がイタリアのブレンボ社とライセンス契約を結び、製造するブレーキシステムだ。
つまりスミンボとは、住友電工が生産するブレンボブレーキを本家ブレンボと区別するためにユーザーたちが呼び出した俗称である(導入初期はブレンボ社からパーツを入手し、住友電工で組み立てていたモデルもある)。
とはいえ、技術力や施設設備、知見などを含めてブレンボ本社が設定するレベルに達していなければ契約を結ぶことはできないので、品質/性能などについてはお墨付きを得ているといっていいだろう。
⚫︎ストリートを軸に据えた設計ゆえに、本気で攻めるには役者不足
国内初採用は1993年のスカイラインGT-R Vspec(BNR32)。その後、ランサーエボリューション/インプレッサWRX/シビックタイプR/フェアレディZ/86/BRZなど数多くの国産スポーツモデルに採用され、スミンボの登場はブレンボの名前を国内に広く浸透させた。ちなみにR35型日産GT-RやGRスープラに装着されているブレンボは国産ではなく、本家イタリア製だ。
本国仕様との違いは、ブレーキ容量がクルマのパフォーマンスに対して必要最低限に抑えられたり、量産性を考慮してキャリパーの素材を鋳造品にするなど、性能よりもコストが重視されている点だ。純正ブレンボはストリートユースをメインに据えた設計がされているため、サーキットなどを本気で攻めたり、チューニングを施して動力性能を引き上げると途端に制動力不足を露呈する傾向にある。
とくにGT-RやフェアレディZのような重量級スポーツカーではポルシェのような絶大なる安心感は得られなかった。それでも当時としては国内最高峰のブレーキシステムであったことは間違いなく、より小排気量/コンパクトな車種へのスワップも盛んに行われている。
⚫︎2輪業界にも「ヤマンボ」「スズンボ」「カワンボ」なる国産ブレンボが存在
ちなみに、2輪業界にも「ヤマンボ」「スズンボ」「カワンボ」などと呼ばれるブレンボブレーキシステムも存在する。その名のとおり、ヤマハ製/スズキ製/カワサキ製のブレンボという意味だ。これらの製造を請け負っているのは静岡の「フジコーポレーション(以下フジコ)」。ブレンボ社と技術提携を締結し、同社から絶大な信頼を得ている。
この信頼があるこそ、ブレンボブレーキが取り付けられるように車体設計を作り込むのではなく、各メーカーの車体設計に合わせて、ボルトオン装着できるように取り付けのピッチを変更することが許されている。
これらのブレーキシステムが「ブレンボであるが、本当の意味でブレンボではない」というのはある意味正しいが、ただひとついえるのは、その技術力、品質は、本家に勝るとも劣らない逸品であることだ。