トレノもカリブも知ってるけど「シエロ」……そんなのあったっけ? クルマ好きでも知らないスプリンター兄弟の超マイナー車 (2/2ページ)

シリーズ随一の独特なボディ形状

 と、1980年代後半から1990年代を彩ったスプリンター一族だが、1台だけ、かなり地味な存在に終わってしまったスプリンターがある。それが1987年から1991年までのわずか4年だけ製造された、セダンとハッチバックを融合させたスプリンター・シエロだ(AE92/AE91)。ボディ形状は5ドアハッチバックセダン、あるいはリフトバックと呼ぶべきスタイルで、細いピラーによるウインドウ面積の大きさ、寝かされたハッチバックドアとリヤクォーターウインドウをもつ独特なリヤデザインが特徴だが、顔つきなどかなり地味。

 駆動方式はFF。ただし、インテリアはけっこう高級感があり、ハッチバックによる実用性(後席を格納すると広大なラゲッジルームが出現)、荷物の積載性はなかなかだった。

 パワーユニットは1.6リッターツインカム(120馬力)を筆頭に、1.5リッター16バルブEFI(94馬力)、1.5リッター16バルブ(85馬力)の3種類を揃えていたものの、AE91=1.5リッターエンジンのスペックでは、荷物満載、フル乗車ではパワー不足が否めず、とくに高速道路や山道の延々と続く登り坂ではアンダーパワーを実感せざるを得なかった。

 たしか155/70R13サイズのタイヤを履いていたから、山道ではタイヤが鳴きっぱなし……という、トレノに代表される一族のイメージからはずいぶん遠いキャラクターのスプリンターでもあったのだ。

 ところで、シエロとはスペイン語で天空の意味だが、その意味とクルマの結びつきがいまひとつわかりにくかったのも事実。1989年のマイナーチェンジで「センスが香る人のニューセダン」という昭和を引きずった(1989年は1月に昭和64年から平成元年に切り替わったタイミング)香りプンブンなキャッチコピーが付けられていたが、やはりセダンとハッチバックの融合的スタイルは、当時としては先進的であったかも知れないが、なかなか世のなかに受け入れられなかったようで、当時の印象では、スプリンター一族のなかで、もっとも見かける機会が少ない(売れていない)スプリンターということになるだろう。

 実際、スプリンターシリーズの月販販売目標台数は、セダン6000台、トレノ3000台に対してシエロは1000台でしかなかったのである。ちなみに同型のクルマが欧州(カローラ5ドア)、北米(ジオ・プリズム・ハッチバック)、オーストラリア(カローラ・セカ)でも販売されていたのだが、売れ行き、人気はどうだったのだろうか……。


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青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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