ワゴンとしてデザインしたわけじゃない! カッコイイと評判の「クラウンエステート」のデザイナーを直撃 (2/2ページ)

新しいジャンルにチャレンジしたクラウンエステート

──では、次にボディの側面について。まず、リヤをキックアップしたスリムなガラスエリアが特徴的ですが、欧州プレミアム勢などのワゴンではリヤまでキャビンを広く見せるのが一般的ですよね

「はい。ただ、クラウン群はタイヤを中心としたデザインとしているので、厚みのないリヤフェンダーによってタイヤが小さく見えてしまうのは避けたかった。また、荷室を広く見せるというよりは、やはりSUV的な佇まいを狙っていることもありますね」

──強く明快なショルダーラインはほかの3つのクラウンにない表現ですが、どのような意図がありましたか?

「やはり、ワゴンとしての伸びやかさの表現ですね。よく見ていただくと、フードの深いラインが一旦Aピラー下で消え、そのままショルダーからリヤまでつながって大きな流れを作っています。さらに、新型のボディはBピラー部が全幅のピークとなっていて、ショルダー部を極限まで外側に張り出しているんです。ここはラインとともに、冒頭でお話ししたスリーディメンション的な立体感がよく出ている部分といえます」

──前後フェンダーがそのBピラー部に向けて大きく張り出しているのが特徴的で、あまり見たことがないサイドビューになっています

「私たちは『Zライン』と呼んでいますが、Z字形のリフレクションがきれい出るようモデリングを繰り返した部分ですね。とくにフロントフェンダーの張り出しがここまで大きいのは珍しいかもしれません。ここは初期スケッチの段階で描かれていた造形で、ほぼ迷いなく進めました。まあ、クラウン群は短期開発でしたので、基本造形は早く決めて、そのぶん造形の練りこみに時間をかけたかったこともありますが(笑)」

──ボディカラーでは『プレシャスメタル×マッシブグレー』を始め5色のバイトーンカラーを設定していますが、このクラスのワゴンでバイトーンを設定するのは珍しいですよね?

「そうですね。ただ、今回はとくにクラスは意識しませんでした。最初に発売したクロスオーバーのバイトーンでは好き嫌いが大きくわかれたのですが、これがイイというユーザーさんが確実にいた。そこで、エステートではボディカラーでクルマのキャラクターを変えようと考えたんです」

──では最後に。このエステートで4車種が揃ったワケですが、いまデザインの展開についてどのような感想をおもちですか? また、次期に向けての方向性は見えてきましたか?

「ひとつは、20~30代の若い層に興味をもってもらえたことに手応えを感じています。また、イベントなどでは女性のお客様も多いですし、じつは輸入車からの乗り替えもかなりあります。クラウンの歴史は長いですが、やはりまったく新しいジャンルにチャレンジしないと生き残れないと。今後に向けてはよりグローバル化が進むと思いますが、日本市場とのバランスについて落としどころが見えたといえますね」

──小手先ではなく、基本から変化したことが大きいようですね。本日はありがとうございました。


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すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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