ダートトライアルは高コスパなモータースポーツだった
また2WDの改造車で争われるクラスもまずまずの予算が必要となっているようで、ナンバー付きモデルを対象とするSA1クラスにスズキ・スイフトで挑む河石 潤選手も「車両の改造費用に200万円ぐらいかかっていますが、それを除くと年間の活動予算は150万円ぐらい。内訳としてはエントリーフィーが40万円、タイヤが8万円、宿泊費が13万円、高速代とガソリン代で36万円ぐらいで、あとはメンテナンスの工賃などになりますね」と解説する。しかし、「海運業の会社に勤めているんですけど、幸い自分は管理職なのでリモートワークを使いながら調整しています。ダートトライアルは舗装と違って走るたびに状況が違うから飽きることがないし、走るたびに新しい発見があるから面白い。海外旅行にボーナスを注ぎ込んだりする人がいることを考えると、ダートトライアルはコスパがいいと思います」とのことで、河石選手はダートトライアルを満喫している。
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一方、ナンバーなしの2WDの改造車で争われるD1クラスは、SA1クラスよりも活動予算が少ないケースもあるようで、スズキ・スイフトで同クラスに挑む鶴岡義広選手は「最初は改造範囲の狭いPNクラス用のマシンとしてスイフトを作ったので、そのときの改造費用が100万円ぐらい。その後、ナンバーなしの改造車にしたときに30万円ぐらいかかりましたが、活動予算は年間で130万円ぐらいです。僕はチームの積載車で一緒にクルマを運んでもらっているので、移動の部分は助かっています」と語る。
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建設業の会社に勤める鶴岡選手もやはりスケジュールの調整に苦労を重ねているようだが、「ダートコースでアタックできるし、しかも国内最高峰のステータスのなかで走れますからね。それに同じコースでも毎回コンディションが違うから、純粋にドライビングが楽しいです。年間130万円は安いと思うよ」とのことだ。
また、ナンバーのない4WDの改造車で争われるSCクラスはかなりのコストがかかっているようで、三菱ランサーで同クラスに挑む岩下幸広選手は「車両の改造費用に関してはピンキリで、どこまで材質変更して軽量化を行うかで変わってきます。それこそ、かけようと思えば1000万円をかけることもできますが、僕は自分で作業をやったりしているので、比較的に改造費は抑えられていると思います」とハード面について解説した上で、年間の活動予算については次のように説明する。
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「だいたい170万円ぐらいですね。エントリーフィーが48万円、タイヤが16万円、フェリー代が30万円、高速代とガソリン代で70万円、あとはホテル代とかですね。僕は測量設計の会社で働いているんですけど、会社から積載車を借りているので、その部分は助かっています」
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さらに岩下選手は「積載車を借りられるかどうか、自分でトラックを運転できるかどうかで改造車クラスのコストは変わってくる。逆にナンバー付きの場合は保険や車検代がかかってくるので、その維持費を考えると年間の活動予算は改造車クラスのほうが安くなる場合もありますよ」と説明する。
「ダートコースを思いっきり走れるのはこのカテゴリーだけですし、いろんな業界の人と知り合いになることもできる。ダートトライアルは健全な趣味だと思います」とのことで、岩下選手は今後も九州から全国へ遠征する日々が続くことだろう。
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以上、駆け足で紹介してきたが、全日本ダートトライアル選手権にはJAFの国内B級ライセンスを取得すれば参戦可能で、しかも活動予算もクルマさえ用意すれば、その後は年間100万〜200万円ぐらいで参戦可能である。その後もマシンを壊さなければ、数年間にわたって国内最高峰シリーズに参戦できることから、まさにダートトライアルは参加型の“Bライスポーツ”としてもじつに魅力的なカテゴリーといえるのではないだろうか。