絶妙なチューニングの運動性能で乗りやすさ抜群
最初に感じたのは、EX30の動力性能が雪道にマッチしているということだ。ボルボのBEVは、EX30より少し大きなサイズのEX40にしても、加速が優しい。優しいといっても、アクセルペダルを強くたくさん踏み込めば、間髪入れずにシートに体が押し付けられるような加速もできる。でも、そんな加速性能よりも注目したのが、少ないアクセルの踏み込み量に対する誠実で滑らかな反応だ。
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滑りやすい路面では、ドライバーが意図した以上の加速により、不要なタイヤの滑りをドライバー自らが生み出してしまうことがある。するとつい余計にアクセルを踏み込み、スリップを誘発させてしまう場合もある。
だがEX30では、ナーバスな路面をドライバーがそっと走らせようと思えば、その意図に合った走りができるのだ。電気ならそんな微調整は簡単だろうと思うかもしれないけれど、この誠実な走りは安全を重視するボルボならではの絶妙なチューニングといえるだろう。それでも滑る場合は、ESC(横滑り防止装置)がドライバーをしっかりとサポートする。
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一度、ガラガラに空いた駐車場で、停車状態からあえて強めの発進加速をしてみた。少々深い新雪が積もるコンディションであり、一瞬滑って前進できずドキッとしたが、すぐにグリップを回復。そこからは雪を丁寧に踏みしめるような感覚を伴いながら走行できた。
さらに、ハンドルを少し切った状態でスロットルをガバッと開けてみる。後輪駆動ならお尻が出るのではないかと想像するも、ESCが見事に姿勢を制御したのだった。
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高速道路での直進性や加速性能も十分。降雪によって物理的な視界の悪化は免れないところであったが、だからこそEX30の優れたデザインによる視界のよさを再認識することができた。視界という点では、街なかはもちろん、山岳路のワインディングでもコーナーを見極める際にも抜けのよさに助けられる。
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BEVの場合、ボンネットにエンジンという重量物を収めるICE車と違い、重量物であるバッテリーはフロアの床下に配置してあるから、低重心かつ重量バランスにも優れる。
前述の理由がもたらすEX30の走行性能の柔軟さを、今回は雪道という舞台で大いに実感できた。すでにVWやアウディでも後輪駆動BEVは登場していて、雪上の坂道もイケることは認識はしていたものの、実際に走行してみて改めて体感できたのだった。
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ただ、やはり降雪地帯にお住まいの方には4WDモデルが安心だろう。2025年2月、ボルボはEX30をよりタフに仕立てた「EX30 クロスカントリー」をグローバルで初披露した。最大航続距離は472km(欧州参考値)で、こちらも日本への導入が待たれる。
今回の試乗では、北欧のクールで優しいデザイン感性が、雪上でなんとも美しく映えた光景が忘れられない。加速性能の扱いやすさ、スムースなハンドリング、乗り心地のよさ、静粛性の高さ、優れたデザインやパッケージングが与えられたEX30は、ボルボのラインアップ中最小のBEVモデルでもあり、街なかでの取りまわし性にも優れるところも大きな美点だ。サイズのわりに航続距離も長く、BEV購入を検討されている方にとっては魅力的な1台ではないだろうか。
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