この記事をまとめると
■初代ホンダ・ヴェゼルは「リアクティブフォースペダル」という技術を採用していた
■リアクティブフォースペダルは適切なアクセル開度をペダルが教えてくれるというもの
■現在はクルマが適切な出力に制御をするために不要な技術となってしまった
アクセルペダルの反力で必要以上にアクセルを踏むのを防ぐ
初代ヴェゼルハイブリッドのアクセルペダルに「RFP」と刻まれた金属プレートが備わっていたことを知っているだろうか。RFPとは「リアクティブフォースペダル」の略称で、この初代ヴェゼルで国内初採用されたテクノロジーだ。
当時のキャッチフレーズは「“足”を通じて、より直感的なエコ運転をサポート」というものだった。簡単にいえば、アクセルペダルの反力によって燃費によいアクセル開度に自然に導いてくれるというものだ。もっと具体的に記すと、適切なアクセル開度になるとアクセルペダルがグッと重くなったように感じられ、そこで右足を止めることを促すという仕組みになっていた。
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機械に詳しい人であれば、アクセルペダルの反力を生み出しているスプリングを可変レートにして一定以上踏み込むと重くなるようにすればいい……と思うかもしれないが、そうすると常に同じポジションでアクセルペダルが重くなってしまう。一定位置で重くなるだけでは、ホンダのリアクティブフォースペダルが目指す機能を実現するのには都合が悪い。
なぜなら、リアクションフォースペダルはエコドライブに貢献する以外に、安全機能としての役割も担っている革新的なアイディアだったからだ。
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たとえば、雪道など滑りやすい路面において、タイヤがスリップ(空転)しないちょうどいいアクセル開度になるとペダルが重くなって、自然と上級ドライバーのようなアクセル操作ができるといった機能もリアクティブフォースペダルはもっている。
また、前方を検知するセンサーが障害物などを見つけたときや、後退時にリヤバンパーのセンサーが接近車両を検知したときには、アクセルペダルがコンコンと振動することで危険な状況をドライバーに教えてくれる機能もある。
このように、状況に応じて適切なペダル反力を生むために専用のアクチュエータを用いて、アクセルの重さを電子制御するという技術が投入されている。
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こうした制御技術により、エコドライブ支援であれば状況に応じた学習機能によりアクセルペダルの反力を調整することができる。タイヤスリップを抑える適切なアクセル開度に導く反力はトラクションコントロールの制御データを利用して補正してくれるといった具合だ。
自由自在にコントロールできるアクチュエータを用いているからこそ、危険が近づいたときにコンコンといった振動でドライバーに伝えるといった機能も実装できるのだ。
あらためて、ホンダのリアクティブフォースペダルを振り返ると、その機能は斬新なものだった。たしかにエコドライブを支援する機能は珍しくないが、スリップしない“ちょうどいい”アクセルの踏み加減をアクセルペダルの反力で教えてくれるというのは新しいアイディアであり、とくに雪道に慣れていないドライバーには車種専用のコーチがついているような感覚になったことだろう。
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現在では、ドライバーのアクセル操作にかかわらず、クルマ(機械)の側で適切な出力に制御することでエコドライブをしたり、スリップを防いだりするような制御が主流となっているが、それはあまりにも機械任せで走っている感もある。
人工知能による自動運転化が進むトレンドにおいて、クルマ任せで安全安心に走れるというのは正しい進化の方向ではある。その一方で、リアクティブフォースペダルのような機能を発展させて、オフロード走行やサーキット走行における最適なアクセルワークをドライバーが学べるような機能も進化させてもらえると、よりクルマ趣味が豊かになっていくかもしれない。