【試乗】クラウンに真打ち登場! 待望の「エステート」はPHEVが圧倒的な違いを見せつけた!! (2/2ページ)

PHEVはクラウンの新たな魅力を体現

 走り始めはもちろんモーターによる静かなもので、トルクの立ち上がり方も穏やかで扱いやすい。近年、輸入EV車に見られるような激烈ともいえる過大なトルクピックアップを抑え込み、ガソリンエンジン車から乗り替えても急な飛び出しなどが起こらぬよう配慮されていて扱いやすい。

 PHEVとHEVともに後輪にも駆動モーターを備える四輪駆動のE-Fourシステムを採用。PHEVのパワースペックは、ガソリンエンジンが177馬力の219Nmであり、フロントモーターは5NM型で182馬力と270Nmを発生。また、後輪用モーターは4NM型で54馬力と121Nmを発生する。四輪駆動車としての力強さも与えられている。システムトータルで見れば、相当な動力性能を秘めているということがわかる。

 HEVモデルはガソリンエンジンが190馬力、最大トルク236Nmと少し大きな値となっているが、駆動モーターの出力は同じ。前述発電機としての機能を強化するためにエンジン出力を微調整している。

 ドライブモードは、エコ・ノーマル・スポーツと、PHEVにはセダンに採用されているリヤコンフォートモードが設定されている。これは、前後モーターによるトルク変動によるピッチングや、四輪操舵システムの操舵フィールを最適化して、後席の乗員が不快に感じないような揺れを抑制。またAVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システム)のショックアブソーバー減衰力を調整して、突き上げやダンピングなどにおいても、後席で不快感を感じないようなセッティングを採用している。

 実際に走らせてみると、路面のゴツゴツした場面では、このリヤコンフォートモードを起動させても、それほどほかのモードと比べて変化は感じない。というよりも、じつはこのPHEV車では、200kgのバッテリーを抱え込むフロアが非常に高い剛性を発揮していて、また遮音性にも貢献しているため、どのモードを選択しても静かで快適。質の高い重厚なドライブフィールが得られている。

 HEVに乗り換えると、その差は歴然としていた。クラウンスポーツでも同様な事象を体感していたが、エステートもその違いが明確にわかる。HEVは軽量だが路面からのざわついた走行フィールが伝わり、ロードノイズやエンジン音も大きく感じ取れる。重厚さにおいてはPHEVが圧倒している印象なのだ。

 DRSと呼ばれる後輪操舵システムは60km/hを堺点として低速では逆相に、高速では同相に操舵される。その適合性が適切で、ドライブフィール上の違和感はまったく感じない。低速では最大4度まで逆相に操舵され、最小回転半径は5.5mと小さく実用的だ。

 エステートとして注目すべきラゲッジスペースは後席シートバックを倒すとフルフラットとなり、前席との隙間を塞ぐプレートが標準装備されていて、近年人気の車中泊を意識して2mの長さを確保している。大人が足を伸ばして寝ても十分なスペースが得られるのだ。

 新型クラウン・エステートは、伝統の高級感と最新技術の融合を見事に果たした1台だ。とくにPHEVの静粛性と乗り心地のよさは、従来のクラウンユーザーはもちろん、新たに高級PHEVを検討する層にも強くアピールするだろう。

 燃費性能はPHEVがWLTCで20km/L。HEVは20.3km/Lである。試乗時間中のメーター表示は15km/L前後を示していて、ワインディングロード中心の走行状況を考えると高燃費といえた。

 PHEVのEVモードでは約62km走行可能で実用性が高い。その余裕ある動力性能、そして優れた操縦安定性。エステートPHEVはクラウンの新たな魅力を体現したモデルとして、ほかのモデルよりも高く評価できる1台だと感心させられた。


この記事の画像ギャラリー

中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報