市場に残したインパクトは絶大
●巨匠による次世代フラッグシップクーペ
3台目にピックアップするのは、スバルのアルシオーネSVX。1989年の東京モーターショーにズバリ「SVX」として出品、1991年に発売となったスペシャルティクーペです。
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「500miles a day」をコンセプトとする同車は、元航空機メーカーらしい開放的なグラスキャノピーが特徴。
ただし、そのキャビンは思いのほか広く、なんと5名乗りを実現していたのが驚きです。前後のブリスターフェンダーはスリムなボディに巧妙に溶け込んでおり、疾走する「GT」感を表現。
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当時のデザイン部長は、社外の空気を取り入れたいとしてG.ジウジアーロにデザインを依頼。美しさと実用性を両立させたクーペボディは、もしかしたら、いすゞ・ピアッツァの2代目としても面白かったかも? なんて妄想すら感じさせる魅力を持っています。
●理想的レイアウトによるスペシャルミニ
4台目に取り上げるのは三菱のi(アイ)です。2003年のフランクフルトモーターショーに1000ccのリッターカーとして出品、3年後の2006年に軽自動車規格として発売となりました。
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リヤミドシップレイアウトとして、高効率パッケージを追求したボディは、じつに2550mmのホイールベースを実現。
エンジンのないフロントから一筆書きで描かれるワンモーションフォルムは圧巻。サイドウインドウからリヤドアへの相似形の曲線も思い切った造形です。
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グッドデザイン大賞受賞の理由に「デザインと居住性の両立」とあるように、卵形のパッケージは広い室内空間に寄与しており、じつに合理的。そのインテリアも外観同様曲面を多用した意欲的な造形が印象的でした。
●乗用車撤退の危機に見せた意欲作
さて、最後に取り上げるのは、この手の特集の常連であるいすゞのビークロスです。1993年の東京モーターショーにヴィークロスとして出品、その評判を受け4年後の1997年に登場となりました。
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クサビ型の強い前進感とひし形のリヤクオーターガラスや張りをもったリヤガラスを組み合わせたアッパーボディはじつに先進的。これとPP素材のアンダーボディとの対比は「異種融合」のテーマを見事に実現しています。
ミニマムながら特徴的なヘッドライトと、シンプルな開口部によるフロントの表情も唯一無二な表情。
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ロータスから移籍間もないサイモン・コックスによるスタイリングは、何とピアッツァ4×4をイメージしたといいます。わずか1700台の販売台数ながら、後年に残した印象は圧倒的といえるでしょう。
さて、今回は「コンセプトカーがそのまま出てきた!」ような5台をピックアップしました。こうして振り返ると、共通して感じられるのは当時のデザイン部に溢れる高い志です。ルーティングに陥らないその姿勢こそが名作の条件といえそうです。